英文契約書の相談・質問集125 最低購入数量を未達成の場合の罰則はどうすれば良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「最低購入数量を未達成の場合の罰則はどうすれば良いですか。」というものがあります。
英文独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)などでは,よくMinimum Purchase Quantity/Amountなどと呼ばれる,最低購入数量/金額というものが定められます。
日本語では「ミニマム」とか「ノルマ」などと呼んだりもします。
年間や四半期ごとに,商品を最低限一定量買うという義務を販売店に課すわけです。
独占的販売店契約では,ある地域で独占的に商品を販売する権利を販売店に付与する以上,販売店にも商品を一定量買うというコミットをしてもらうということです。
では,この最低購入数量を販売店が達成できなかった場合,どのようなペナルティを売主は課すのでしょうか。
一般的には,①独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を解除する,②独占販売権を奪い非独占販売店契約に切り替える,③未達成の金額を請求するなどの制裁が記載されます。
ちなみに,販売店からすれば,③の制裁が一番やっかいだと思います。
なぜなら,最低購入数量を達成できなかったということは,販売店の商品販売が販売計画とは裏腹に,不調であったということを意味するのが通常であるにもかかわらず,結局は購入したのと同等以上の利益を売主にもたらすことを義務付けているからです。
しかも,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)に,販売店からの中途解約条項などが設けられていない場合で,契約期間が長期(3-5年間)などとされている場合には,注意が必要です。
なぜなら,この場合,売主は,最低購入数量/金額に届かない金額の請求をできるということになりますので,契約を継続することにデメリットがなく,他の選択肢として販売店契約を解除するという選択肢があっても,それを選択せずに契約を継続する可能性があるからです。
販売店の支払能力には問題がないような場合,売主としては,契約期間中,販売店が売主が見込んでいる利益を上げてくれれば,実際に商品が市場で売れていなくとも受け取れる利益に大差がない(販売原価がかかっていないのでむしろ利益率が高い)のであれば,契約を続けて問題ないと考える可能性があるということです。
そうすると,販売店(Distributor)としては,長めの契約期間中,市場での販売が芳しくないのに,最低購入数量を買って在庫を多く抱えるか,商品は買わずにノルマ未達分を賠償しながら契約を継続しなければならないという自体になりかねません。
販売店(Distributor)から販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を解除したくても,中途解約条項がないし,売主が契約違反をしているわけではないので,自分からは解除ができないからです。
したがって,③の制裁が課されているときは,販売店は契約期間などにも十分に注意する必要があります。
例えば,1年毎の更新で,1年毎に最低購入数量/金額が定められている場合は,3-5年のまとまった期間が与えられている場合に比較してリスクは低いといえます。
このように,契約の解除権は,あくまで権利として定められている(mayで表現されることが一般的です。)のであって,解除権を持っている当事者は,それを行使してもしなくても良いわけです。
一定の事由が生じた場合に,自動的に契約が終了になるという内容の条項とは意味が違うわけです。こうなると,他方当事者が飼い殺しのような状態になることがありえますので,注意が必要です。
また,別の例として,販売店がノルマを少しだけ達成できなかった場合を考えてみましょう。
この場合,販売店としては,最低購入数量/金額を少しだけ下回っただけですから,次年度からはもっと利益を見込めると考え,契約を続けたいという場合もあると思います。
その場合でも,①の制裁が書かれていると,売主の方から,最低購入数量/金額の未達を理由に,契約を解除されてしまうリスクがあります。
このようなリスクに対処するため,場合によって,もし販売店が最低購入数量/金額を達成できなかった場合,販売店の救済措置として,一定の期間内に商品を買い増しして未達分を穴埋めするか,差額の補償金を支払うことで,最低購入数量/金額条項違反をなかったことにすると定めることもあります。
買主としても,差額を販売店が負担してくれるのであれば,その後も契約を続けても良いと考えることはありえます。
もっとも,最低購入数量/金額はあくまで「最低」のノルマですので,売主は他の販売店を指名すればもっと利益が出ると考えるのであれば,例え差額を埋めてくれても足りないという考えもありますので注意して下さい。
こうした観点から,売主の利益・不利益と販売店の利益・不利益を天秤にかけながら,妥当な制裁と救済措置を模索していくことになります。
最低購入数量/金額は,極めて重要な条項の一つです。
契約期間や制裁についてよく理解せずに,安易に達成できるだろうと考えてサインしてしまうと,あとで思いの外,重い義務を負っていたという場合もありますので,販売店としては特に気をつけなければならないでしょう。
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