英文契約書の相談・質問集138 英文契約書で義務を表す用語はshallかwillどちらが良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で義務を表す用語はshallかwillどちらが良いですか。」というものがあります。
一般的には,英文契約書で義務を表す用語は,shallを使うことがほとんどだと思います。
ただ,義務を表す用語としてwillを使っている英文契約書も存在しています。
Willを,義務を表す用語として使用しても,義務を表す用語として使用されていることが明確にわかるのであれば,特に問題はないでしょう。
同一の英文契約書中に,shallとwillの両方が使われていたとしても,shallが義務として使われており,willが未来を表す助動詞として統一的に使用されて,両者の用法が区別されているのであれば,それも特に問題はないかと思います。
問題になるとすると,両者が同一の英文契約書の中に混在しており,その中で,willが義務を表す意味でも,未来を表す意味でも両方の意味で使われているような場合でしょう。
その場合は,義務を表す単語としてshallのみを使用せず,義務的な表現としてwillも使用していることに何らかの意図があるのかどうかということが問題になることがあります。
ここに何らの意図もなく,単に混在しているということも実際にはあります。その場合は,当事者がすべて義務として理解しているのであれば,実際に何か問題を生じることはないかと思います。
もしあえてshallとwillを区別しているとすると,本来義務を記載すべきところをwillとあえてしているということは,それは義務を表したものではないという解釈がありえます。
もちろん,shallとwillの両方を使っている場合に,義務としても解釈できるところがあえてwillになっているということは,それは義務を表したものではないと単純に解釈できるのかというと,そう簡単な問題ではないと思います。
義務が書かれたのだと主張したい当事者は,willで表された箇所について簡単に義務ではないと認めないからです。
そもそも,shallとwillを同じ契約書で併用することであえてshallと区別してwillを使用しているのではないかと勘ぐられること事態が,契約解釈をめぐる紛争の火種になることがありえます。
そのため,特に意味がないのであれば,用語は複数の意味を持たせることをせずに統一的に使っておいたほうが良いかもしれません。
いわゆるひな形なども,このような点が明確に意識されているものばかりではないので,注意したほうが良いとはいえます。
ただ,前述のように,willであるから義務ではないという主張が出されることもそう多くはないでしょうし,そう簡単にそのような主張が認められるわけでもないとは思います。
なお,禁止を表す用語としては,詳細は省きますが,may notやwill notとするよりも,shall notで統一するのが良いと思います。
ちなみに,英文契約書の作成実務に携わる人の中には,shallという用語自体多義的なため,義務や禁止を表す表現はshallすら使わない表現をしたほうが良いとする論者もいます。
例えば,義務を表すには,is required to doという表現をしたり,禁止を表すには,is prohibited from doingという表現をしたりすべきだという考えです。
確かに,これらの表現のほうがより直接的に義務や禁止を表すことができるので,誤解や異なる解釈を招かないことにはなると思います。
→next【英文契約書の相談・質問集139】取引先は知人の経営者で信頼できるので契約書はいらないですよね。
英文契約書に関するサービス内容のお問合せ,見積依頼は下記からお気軽にどうぞ。
正式にご依頼頂くまで料金はかかりません。
原則として,当日,遅くとも1営業日以内(24時間以内)に折り返しご連絡させて頂いております。