英文契約書の相談・質問集140 輸出する際に特に気をつける製品はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「輸出する際に特に気をつける製品はありますか。」というものがあります。
そもそも,その国への輸出(その国における輸入)が法律で禁止されている製品であれば,話になりませんので,その点は前提としてクリアされなければなりません。
例えば,そもそも製品自体が違法な製品という場合だけではなく,製品は日本で適法に製造され,普通に使われているもの(カメラなど)でも,軍事目的やテロ行為に転用されるような技術が使われていたりするものは,国によっては輸出ができないことがあります。
では,輸出自体は問題なくできるという場合でも,より注意を要する製品というのはあるのでしょうか。
例えば,もし製品に欠陥があった場合,人が怪我をしたり,死亡したりする可能性があるような製品は製造物責任(Product Liability)の観点から,要注意といえます。
自動車のエアバッグなどが典型例でしょう。また,医療関係の機器なども,欠陥があれば重大事故に繋がりやすいため,これに当たると思います。
もちろん,製造物責任は,利用者が自分の責任で使用方法を誤った(ミスユース:misuse)が故に事故が生じた場合まで輸出者に責任を負わせるものではありません。
ただ,欠陥があった場合に,特にその欠陥によって人が怪我したり,死亡したりするような危険があるようなものではない場合と,その危険があるという場合では,海外展開に当たり想定されるべきリスクの程度が異なることは明らかでしょう。
海外向けのPL保険(生産物賠償責任保険)などにも加入することになるでしょうから,保険料のコストも見ておく必要があります。
万一,リコールなどになれば,大きな損害に繋がる可能性がありますので,十分な事前対策が必要になります。
また,食品なども,人が体内に摂取するものですので,リスクが高いといえるでしょう。そもそも食品については国によって(EUなど)は,規制が高度にかけられていて,輸出自体ハードルが高いことがよくあります。
子供向けの製品もリスクが高いと言えるかもしれません。製品に欠陥がある場合はもちろんのこと,製品には全く欠陥がなくとも,子供はそもそも誤用をしやすいので,事故が起こる可能性が高くなります。
もし誤用で事故が起きてしまうと,メーカーに法的な責任はなかったとしても,子供の問題はセンシティブですので,大人の問題よりも,事故が起きたということそれ自体がメーカーや製品のレピュテーションに大きく影響する可能性があります。そのため,リスクが高いと言えるかもしれません。
さらに,少し視点が変わりますが,2018年5月以降にEU圏の消費者向けに商品を輸出していく場合,General Data Protection Regulation(GDPR)に注意が必要です。
EU圏内の消費者の個人情報を取得する場合,それが日本にある日本企業であってもGDPRに従った処理が必要になります。
この内容を知らずにGDPRに違反すると,高額の課徴金を課され,ビジネス上の利益を失うことになりかねません。
したがって,EU向けの商品の場合は,商品の性質・内容にかかわらず,個人情報を取り扱うのかどうか,データの処理・管理をどうするのかを十分に検討してから輸出取引を開始する必要があります。
当然ですが,商品の内容・性質や,進出していく国の規制・法律などによって,海外展開のリスクは変わってきます。
事前にリスクの内容と程度を十分に分析して,可能な手当は施してから,なるべく安全な状態で海外展開をしていくということが大切になります。
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