英文契約書の相談・質問集144 当事者双方が相手方に損害賠償するとなっていれば平等ですよね。

 

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「当事者双方が相手方に損害賠償するとなっていれば平等ですよね。」というものがあります。

 

 

 損害賠償条項(Damages),正確にいうと,英米法を基礎にして作られている英文契約書の場合,補償(危険や責任を当事者にどう配分するかの問題)条項(Indemnity/Indemnification)という条項のほうが一般的ですが,こうした条項が英文契約書に挿入されることが多いです。

 

 

 例えば,当事者が契約違反を行い,それにより相手方に損害を生じさせたような場合に,契約違反をした当事者がその損害を補償するというような内容の条項が補償条項(Indemnity/Indemnification)と呼ばれます。

 

 

 英文契約書では,この補償条項(Indemnity/Indemnification)は,@各当事者がそれぞれ相手方を補償するという双務的なパターンと,A当事者の一方が相手方を補償するとだけ書かれている片務的なパターンと大きく分けて二通りあります。

 

 

 Aの片務的なパターンの場合,当然ですが,形式的に見て不平等です。当事者の一方のみが補償されるとなれば,他方の当事者は補償を受けられないということになりかねず,不平等に見えます。

 

 

 反対に,@の双務的なパターンであれば,お互いが相手から補償を受けられることになりますので,形式的には平等に見えます。



 英文契約書の表現では,Each party shall defend, indemnify and hold harmless the other...(各当事者は相手方を防御し,補償し,かつ,相手方に損害を与えないようにする)などとなりますので,一見平等に見えます。

 

 

 ただ,いずれのパターンでも,形式的に見ただけでは,実質的な平等性を把握できない危険がありますので,注意が必要です。

 

 

 @の双務的なパターンの例でいえば,一見平等に見えたとしても,より突っ込んで実質的に見ると,当事者の立場によって実は不平等になっているということがありえます。

 

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や,商品の売買契約(Product Sales Agreement)などでは,当然ですが,売主と買主という逆の立場の当事者が存在します。

 

 

 そして,販売店や買主のメインの義務は,代金を支払うことであり,それ以外の大きな義務というのは通常ありません。

 

 

 反対に,メーカーや売主の方は,義務が多く,また,その内容も複雑です。品質を備えた商品でなければならないとか,納期までに商品を引き渡さなければならないとか,買主よりも多くの高度な内容の義務を負います。

 

 

 そうなると,契約違反で責任を生じやすいのは売主ということになります。また,その責任の程度(損害賠償の金額)が大きくなる可能性があるのも主に売主です。

 

 

 買主の方は,代金を期日まで支払わなければ,通常,遅延損害金という付加金を払えば済んでしまうことがほとんどです。そのため,契約違反をしても,遅延損害金を超えて損害が拡大したりすることは通常ありません。

 

 

 そうすると,一見平等な@の双務的な内容になっていたとしても,例えば,「各当事者は軽過失の場合でも逸失利益なども含めて相手方を補償する」というような内容になっていた場合,その恩恵を受けるのはもっぱら買主ということに実はなります。

 

 

 したがって,一見平等に見える@の双務的な補償パターンでも,その内容によっては,もっぱら買主側が有利になっているということもよくあるのです。

 

 

 また,逆にAの片務的補償のパターンでも,常に不平等かというとそうではないこともあります。

 

 

 例えば,上記の例で,「売主が,重過失をもって契約違反をした場合,買主がそれにより蒙った通常損害を賠償する」などとなっていたとします。

 

 

 これは,買主のみが補償を受けられるとなっていて,売主が受けられる補償については言及されていませんから,売主としては買主に有利で不平等なので,修正したいと思うかもしれません。

 

 

 しかしながら,実質的には,@の双務的補償パターンの例よりも,売主に有利といえます。



 なぜなら,経過失の場合が免責になっていますし,損害賠償の範囲が,逸失利益などを含まない通常損害(この概念は国によってまちまちですので,あくまで参考例です)に限定されているからです。

 

 

 そして,前述したとおり,売主が補償をについては言及されていない体裁になっていたとしても,「支払い遅延には遅延損害金を付加する」という条項が別にあれば,売主が賠償を受けるのは,通常は,この遅延損害金だけですので,双務的な補償条項が別に書かれていなくとも売主に特段不利益はないと考えられるのです。



 つまり,実際には,上述した例では,@の双務的な補償のパターンの例のほうが,売主が買主を補償する場面が多く,金額も高額になる可能性があり,売主に不利で,Aの片務的な補償のパターンの例のほうが,売主が買主を補償する場面は少くて済み,金額も少額で済む可能性が高いため,売主に有利といえるのです。

 

 

 このように,形式的に不平等に見える書き方がされているから問題だということではないですし,逆に,平等に見える書き方がされていれば常に問題ないということでもないのです。

 

 

 大切なのは,一方当事者の立場に立って,具体的・実質的に状況を想像し,より突っ込んで場面を想像し,リスクを考え,修正をするということです。

 

 

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