英文契約書の相談・質問集148 契約書の最低購入数量を達成できなければ解除されても仕方ないですよね。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書の最低購入数量を達成できなければ解除されても仕方ないですよね。」というものがあります。
例えば,独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)などを締結すると,通常は,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)が定められます。
最低購入数量は「ノルマ」とか「ミニマム」とか呼ばれることもあります。
そして,販売店が商品の購入につき,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を一定期間中に達成できなければ,①独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)が解除されたり,②独占販売権を剥奪されて非独占販売権になったりなどのペナルティが契約書に記載されていることが多いです。
では,販売店が,これらの最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成できない場合,甘んじて解除や独占販売権の剥奪というペナルティを受けざるを得ないのでしょうか。
原則としては,契約書に記載されているのですから,そのとおりの効果が認められることになるでしょう。
つまり,販売店が最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を一定期間中に達成できなかった場合は,契約の解除や独占販売権の剥奪をされてしまうことになるでしょう。
ただ,売主・サプライヤー側に不当な行為があった場合は,どうでしょうか。例えば,不当な率とペースで商品価格の値上げを繰り返して,事実上注文を不可能または著しく困難とした場合や,生産が間に合わないなどの理由で,一部受注を拒絶されたような場合です。
このような場合にまで販売店が最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)の不達成による制裁を受けるのは合理的でないようにも思えます。
契約書に,このような場合の措置が書かれていれば,わかりやすいです。例えば,サプライヤーからの受注拒否があった場合は,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)の対象の数量から受注拒否分を差し引くなどと記載してあるような場合です。
このような手当が契約書でなされていれば,受注拒否の分は購入したことになるのですから,販売店にとっては利益になります。
また,契約書に値上げの要件が書かれていて,それに従っていないということが明白であるような場合には,販売店はそもそも値上げについて抵抗する余地があります。
これにより,販売店は商品代金の値上げを防ぎ,予定していた分の商品数を買い付けることができる余地があります。
他方で,何も書かれていない場合はどうなるのでしょうか。
この場合は,最終的には裁判所などの判断によることになってしまいますが,売主・サプライヤーに不当な意図があるなど一定の場合には,売主・サプライヤーの行為の不当性を主張して,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)未達による制裁の発動を争うということもありうるかと思います。
最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)は,その量を一定期間で購入してくれれば,売主・サプライヤーとして最低限必要な利益が確保できるという視点で設定されているはずです。
それにもかかわらず,不当な値上げを繰り返したり,受注を拒否したりする場合,何らかの不当な意図がある場合がありえるでしょう。
特に,工場のストライキ(ストライキが不可抗力に当たるかはさておき)や天候不順など,当該商品を供給することを妨げるような不可抗力事由もないのに,受注を拒否するようなことがあれば,不当な意図が推察されます。
例えば,他に良い販売店候補が見つかった,または,自社で販社を設立して販売展開したいなどが裏にあるかもしれません。
そういう場合は,立証の問題などはあるでしょうが,注文の拒絶や不合理な値上げによる実質的な受注拒否によって最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成できなかった,つまり,売主・サプライヤー側から最低購入数量の達成を妨害されたことを主張して,制裁を回避する道も場合によってありうるかと思います。
そうはいっても,やはり,争いになること自体で時間を奪われ損失を受けますから,英文契約書に何と書いてあるかがすべての出発点です。
そのため,上記のような問題が生じそうな案件であれば,受注拒否の要件や,値上げの要件などを調整したり,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)充足の判定基準を調整したりして契約書に反映させて,最初からより安全な内容にすべきということにはなるでしょう。
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