英文契約書の相談・質問集150 海外取引でよくトラブルになるのはどういう内容ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引でよくトラブルになるのはどういう内容ですか。」というものがあります。
海外取引は,国内取引よりもトラブルに遭遇する可能性が高いといえます。
文化,言葉,商慣習,法律,政治など様々な相違点がありますので,きちんと契約書を交わしていたとしても,やはりトラブルは国内に比べて起こりやすいものです。
売掛金の未払いや,製品の品質問題,納期遅延,商品の受領拒絶,受注拒否,レスポンスのスピードなど,様々なトラブルが起こります。
中でも,トラブルが起こりやすいものの代表例が,契約終了時のトラブルです。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結しているケースでいえば,ある程度長期間にわたって,海外の販売代理店が日本のサプライヤーから商品を仕入れ,現地国で販売展開していたということがあったとします。
そして,サプライヤーが,どこかのタイミングで,販売代理店の実績が期待よりも芳しくないと考えたり,経営陣が交代したりして,その販売代理店とは別の販売代理店に商品を扱ってほしいと考えたとします。
こうなると,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が独占契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)であった場合,そのままでは,新しい販売代理店を指名することができません。
販売代理店に独占販売権がある以上,契約の有効期間中は,他の販売代理店を指名することは禁止されていることが普通だからです。
そのため,現行の契約を解除や期間満了により終了させ,それから新しい販売代理店を指名することになります。
そして,サプライヤーは,販売代理店に対し,例えば,契約書の中途解約条項(Termination without Cause Clause)や期間満了による終了条項(Expiration)に基づき,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了を通知します。
トラブルになる確率が高いのは,まさにこのときです。販売代理店からすれば,これまで長期に渡って,商品の販促に努め,広告宣伝費などを積極的に使って商品の認知度とブランド価値を高め,販路を拡げてきたという思いがあります。
こうして販売代理店が高めた商品やサプライヤーのブランド価値のようなものをGoodwill(のれん代)と表現することがあります。これを補償してほしいというのが販売代理店のよくある本音なのです。
また,上記の例では,販売代理店が契約違反をしたわけではなく,中途解約や期間満了による終了を言い渡されたというパターンです。
これまで努力を続け,販売代理店の契約違反などもないのに,サプライヤー側の都合によって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了すると一方的に言われることになります。
そのため,販売代理店としては,これまでの努力とコストが水の泡になると感じ,素直に「わかりました」という気にはならないとが多いのです。
もちろん,ビジネス的にも,商品がそのマーケットでようやく認知され,利益率の高い状態で成長期を迎えたというようなときに取引を打ち切られてしまえば,これまで投下した資本をようやく回収できるタイミングではしごをはずされるわけですから,大きな打撃となることも多いわけです。
そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)のような継続的な契約を終了させる際には,トラブルに発展することが多いのです。
もちろん,サプライヤーとしては,英文契約書に,契約を終了させる際に販売代理店側は何らのクレームもすることはできないなどと書いておきますが,書いてあるからといって,黙って応じる販売代理店ばかりではないのも現実です。
また,現地法によっては販売代理店保護法のようなものがあり,強制的にこれが適用されて,サプライヤーに補償金の支払いなどが強制されることもあります。
このような法律に従って法的にクレームが通るケースであるかどうかはさておき,一言言いたい,納得ができないという経営者はそれなりにいるでしょう。
このようなトラブルになることはある程度避けられないところもありますので,最終的には,月並みですが,お互いの利害をよく考え,交渉によって解決するのが良いということになると思います。
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