英文契約書の相談・質問集151 英文契約書を和訳して契約書にする際の注意点はありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書を和訳して契約書にする際の注意点はありますか。」というものがあります。

 

 よくあるパターンとして,海外企業の販売代理店を日本企業が行うというときに,英文契約書を和訳して和文契約書として使用するというものです。

 

 海外企業が契約書を用意していますが,それは英文契約書です。

 

 これをそのまま日本の顧客に使用すれば話は早いのですが,販売店である日本企業が英文契約書を使って営業しても,日本の顧客が英文はわからないので和文契約書でないとサインしないということはよくあります。

 

 こういう場合に備えて,英文契約書を和訳した和文契約書を使用して営業することがあります。

 

 ただ,本来的にはこうした和文契約書の使用は避けたほうが無難です。なぜなら,英文契約書は,当然ですが,外国語である英語を前提にして,多くの場合は英米法の考えを基礎に作られているからです。

 

 これを,別の言語の日本語に直しても,英文で想定されている概念や内容をそのまま和文契約書にスライドさせるのは難しいのです。

 

 また,英語の意味と日本語の意味が違う場合,日本語の意味で顧客が理解してしまい,オリジナルである英文の契約内容と異なってトラブルになることもありえます。

 

 例えば,顧客は,"sales target"という英語を,和文では,「販売目標」と訳されていたため,顧客は,あくまで「努力目標値」のように理解したが,英語では,達成しなければならない法的義務の意味だったなどということが起こりえます。

 

 そのため,原則として,英文で作られた契約書は,英文のまま締結するのが安全ということになります。

 

 そうはいっても,それではビジネスにならないということはありますので,和文化して使用することは場合によってはやむを得ないでしょう。

 

 その場合でも,できれば,英文契約書は英文のまま効力を有するものとして締結し,和訳を参考までに添付するという方法のほうが安全です。

 

 そして,英文契約書に,「和訳はあくまで参考として添付されているもので,英文契約書のみが法的効力を有する」と記載するのです。この条項を言語(Language)条項と呼んでいます。

 

 こうすれば,日本の顧客は和文を読んで,だいたいの意味は理解しつつ,実際には英文契約書にサインして,英文契約書が効力を持ちます。

 

 そのため,英文と和文の意味が違うときにどちらが効力を有するかわからないというようなトラブルは避けられる可能性が高まります。

 

 最後の手段が,和訳した和文契約書を契約書として使用するというものです。

 

 これは,前述した問題を生じる可能性がありますので,できれば避けたいところですが,この選択肢しかないことも現実にはあります。

 

 その場合,顧客の側で,和文契約書を読んで,意味がわからないとか,もっと簡単にしてほしいという要望が出ることも多いです。

 

 英文を和訳しているので,どうしても違和感のある表現になりますし,そもそも日本語にない概念を訳していることもありますので,不自然な表現になるのは否めません。

 

 また,英文契約書は,和文契約書に比べて長文ですので,逐語訳をすると,日本語にとっては非常に長い文章になり,読みづらくなるのです。

 

 そのため,日本の顧客から修正要求が出ることがあります。この際に,あまり和文契約書の内容を変更すると,英文契約書の内容と異なることになってしまいます。

 

 そうすると,オリジナルの英文契約書を作成した海外の本社が和文契約書の内容を承認しないとか,顧客との間でトラブルが発生した場合に契約内容が異なるので,海外本社としては責任を負わないなどと主張されるリスクが生じます。

 

 そのため,元の英文契約書の内容と実質的に異ならないように和文契約書の内容を修正することになるのですが,これは容易ではありません。

 

 私もこうした依頼を受けることがありますが,この要望に応えるのは相当に大変だと思っています。

 

 とはいえ,ある程度修正しないと顧客に通用しませんので,リスクを取りつつ,大きく意味を違えたり,重要な部分の意味が異なったりすることがないように配慮して,修正をしていくことになります。

 

 このように,英文契約書を和訳して契約書として使うのはそう簡単なことではないことがおわかり頂けたと思います。

 

 リスクがあることをわかった上で,ビジネス上の要請とバランスを取りながら,適宜選択していくことになります。

 

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