Satisfactory(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Satisfactoryがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「満足する」という意味で使用されます。
…satisfactory to Buyerとすれば,「買主が満足する…」という意味になります。
こういう表現をすると,満足するかどうかは,買主の主観的な問題ということになります。
そのため,satisfactory to...の...の部分にくる当事者の主観で,そこに書かれた義務を履行したことになるのかどうかが決まってしまいます。
これは,相手方にとっては,不利益が大きい場合があります。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や売買契約などで,商品の品質などに絡む条項が,satisfactory to Buyerとなっていて,買主が満足する品質・性能を備えていることを保証するなどと書かれていたとします。
こうなると,判断基準が,合理的なものか,標準的なものか,一般的なものかということではなく,あくまで買主が満足する品質・性能を備えているかどうかになってしまいます。
売主としては,その商品が通常備えている品質・性能の商品を用意して,買主に引き渡したとしても,買主がその商品をこう使いたいという目的があって,その目的に使用するするには性能・機能が足りていないなどと考えたとすると,保証違反になる可能性が出てきてしまいます。
そのため,このような規定は,売主にとっては要注意のものということになります。
品質保証に限りませんが,当事者の一方の主観で決められるというのは,相手方にとっては,注意が必要な条項です。
そのような場合は,reasonablyという用語を挿入して,「合理的に」そう判断される場合はという意味に変更したり,該当する場面を詳細に規定し,主観を排除したりする修正が必要になるでしょう。
反対に,買主としては,自己の使用目的に適合するものでなければ,買う意味がないということになるでしょう。
既成品であれば,サンプルをテストして,買主の使用目的に合致するかどうかを事前に検証することができます。
ただ,特別仕様で製造してもらうという場合は,事前にテストができないという問題があります。
その場合でも,買主の主観的な使用目的に合致することまで売主に保証してもらうことは,通常,難しいと思います。
普通は,あくまで買主が提出した仕様書に合致する製品であるということまでが保証の対象になるかと思います。
以上のように,satisfactoryという英文契約書用語は,主観的な判断を許すことになりますので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,注意すべき用語といえます。