英文契約書の相談・質問集165 隠れたる瑕疵(Latent Defect)とは何でしょうか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「隠れたる瑕疵(Latent Defect)とは何でしょうか。」というものがあります。
隠れたる瑕疵(Latent Defect)は,「一見してわからない欠陥」と理解しておけば良いと思います。
対義語は,明白な瑕疵(Patent Defect)というもので,こちらは,「一見してわかる欠陥」と理解すると良いかと思います。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や売買契約(Sales Agreement)の場合,商品に欠陥があったときにどのように対処するのかは,重要な問題ですので,通常,その対処法が契約書に記載されます。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や売買契約(Sales Agreement)でよく使われる規定の方法は,2つの場面に分けて規定するという方法です。
最初に,売主が買主に商品を引渡した後,買主が商品を検査(Inspection)し,一見してすぐにわかる欠陥(Patent Defect)について規定します。
例えば,商品に傷がついているとか,商品の一部にヒビが入っているとか見た目でわかるような欠陥のことです。
もう一つの場面は,商品の引渡し後の検収(Inspection)が終わり,検査に合格した後に発覚する,見た目にはわからない欠陥(Latent Defect)についての規定です。
これは,商品を使ってみて動かなかったとか,食べてみたら異物が入っていたとか,見た目にはわからず,利用してみてはじめてわかるというような欠陥です。
こうした隠れたる瑕疵(Latent Defect)というのは,取引先の買主が実際に,箱を開けて商品を出して,使ってみるというわけにいかないので,エンドユーザーの手元に渡ってはじめて発覚するということがよくあります。
そのため,最初の買主による検査・検品(Inspection)の段階では発覚しません。
それにもかかわらず,検収に合格(Pass)した場合には,その後一切瑕疵についてのクレームは入れられないということになりますと,買主にとっては具合が悪いということになります。
そのため,2つの場面を規定し,まず,買主は商品を受け取ったらすぐにわかる欠陥(Patent Defect)がないかを検査し,その段階では欠陥が見つからなかった場合でも,後から隠れた瑕疵(Latent Defect)が見つかった場合の対処についても記載することが多いのです。
もちろん,無制限に欠陥について対処するとなれば,売主の負担が大きすぎるということになります。
そのため,通常は,保証期間(Warranty Period)を設け,一定期間中に限り,瑕疵に対して対応すると定めることになります。
この保証期間(Warranty Period)を定めるときは,期間の長さだけではなく,いつからその期間が進行するのかについても注意を払う必要があります。
というのは,例えば,買主に引き渡してから1年間なのか,買主がエンドユーザーに売却してから1年間なのかによって,売主の負担(裏を返せば買主の保護)が全く異なるからです。
買主に対する引渡日は売主も把握していますが,エンドユーザーに対する販売日は,売主は,直接はわからないという問題もあります。
そのため,保証期間(Warranty Period)を定めるときには,期間の長短だけではなく,期間の進行の起算日(いつから保証期間が進行するのか)にも注意を払う必要があります。
なお,欠陥が見つかった場合の対処法としては,一般的に,①商品を欠陥のない商品と交換する,②修理する,③代金を返金するという方法がよく取られます。
これらのうち,どの選択肢をどちらの当事者が選べるのかも重要なので,英文契約書には記載することが通常です。
買主が選ぶとなると売主の負担が大きいので,売主が選択できるという定めになるほうが割と多いかと思います。
隠れたる瑕疵(Latent Defect)は,商品が流通してから問題になることが多いので,その欠陥が本当に最初からあったのかということもよく問題になります。
売主としては,欠陥の証明方法(例えば欠陥部分の写真に撮って写真を送る,欠陥品の現物を送るなど)についても予め英文契約書に記載しておき,その方法で欠陥の有無や欠陥の原因がわからない場合は,売主は免責されると契約書に記載することもあります。
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