英文契約書の相談・質問集169 フランス語憲章とは何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「フランス語憲章とは何ですか。」というものがあります。
カナダのケベック州にある法律を指します。
例えば,日本のメーカーが,ケベック州の販売店(Distributor)と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して,ケベック州で商品を販売展開しようとする際には注意しなければならない法律です。
簡単にいうと,商品などにフランス語の表記をしなければならないということです。
例えば,日本のメーカーが,グローバル・マーケットに商品を販売展開する際に,パッケージや説明書などを英語で作成していたとします。
英語は,世界共通語ともいっても過言ではない地位を獲得していますので,通常は,英語でパッケージや説明書を作成しておけば,多くの消費者が理解できるのグローバル・マーケットで売ることが可能でしょう。
ところが,カナダのケベック州においては,歴史的政治的背景から,英語の表記だけではだめで,フランス語でも表記しなければならないと法律によって決められています。
そのため,上記の例では,日本のメーカーは英語表記しかない商品をそのままケベック州で販売することはできず,フランス語も併記しなければならないということになります。
その際,フランス語は別の言語(英語)と同等に扱われなければならないというルールもあるため,例えば,英語のほうが目立って,フランス語は小さい字で書かれているなどという状態も禁止されています。
フォントやデザインで,英語とフランス語が同程度の表記をされていなければならないのです。
これに従わなければならないのは,メーカーにとっては,コストがかかりますし,デザインなどにも影響するので,やっかいなルールといえるでしょう。
違反すると罰則もありますので,事前に既に市場に存在する類似品と比較するなどして違法性がないかを確認する必要があるでしょう。
また,現地の弁護士などにパッケージデザインを見てもらい意見をもらうこともありえます。
フランス語憲章に限らず,日本のメーカーが,海外の販売店(Distributor)と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などを締結して,海外で商品を販売展開しようとする場合,このような「特殊な」ローカルの規制が問題になることがあります。
基本的に,多くの国で,「契約自由の原則」,「私的自治の原則」という原則が採用されており,契約当事者が合意した内容が尊重され,当事者の合意の内容は法律よりも優先するとされています。
ところが,いくつかの法律は,「強行法規/強行規定」と呼ばれ,当事者がその内容に反する合意しても,合意が優先されず,法律が強制的に優先適用されるということになっています。
フランス語憲章もその一つです。つまり,契約当事者が今回は英語表記だけで問題ないと思って合意しても,法律が優先するので違法ということになるわけです。
他にも,海外の販売店(Distributor)と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結するときに気をつけるべき法律の代表例には,いわゆる「販売店(代理店)保護法」があります。
これは,メーカーが販売店(Distributor)との間の販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させる際に,販売店(Distributor)が一定の保護を受けるという法律や判例のことを総称していいます。
現地国で,この販売店(代理店)保護法に相当する規制があると,日本のメーカーが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させようとした際に,思わぬ損害賠償(補償金)請求を受けたり,自社が思っていたタイミングでの契約終了を否定されたりすることがあります。
金額も,販売店(代理店)保護法の内容によっては,損害賠償金(補償金)の金額を営業利益の数年分とされることもあり,かなり多額の賠償をしなければならないというケースもあります。
以上のとおり,英文契約書の作成においては,当事者が合意した内容を契約書に落とし込むということが最も基礎的なことなのですが,それだけでは足りず,現地の強行法規/強行規定を調査し,強行法規/強行規定に違反しないようにするということも大切なことです。
法律違反をして,損損害賠償や罰金を払うことになってしまうと,せっかく得た利益を吐き出すことになり,利益を得られないどころか,大きな損失を受けてしまうこともあります。
例え法律の内容を知らなかったとしても,「法律の不知は害される。」という格言のとおり,救済されませんので,事前に対策を講じておく必要があります。
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