英文契約書の相談・質問集133 中途解約条項にはどう対応すれば良いでしょうか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「中途解約条項にはどう対応すれば良いでしょうか。」というものがあります。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をしていると,契約書に中途解約条項が挿入されていることがあります。

 

 中途解約条項は,英語では,Termination without causeなどと表現されています。

 

 この中途解約条項(Termination without cause)は,契約書に記載された有効期間の途中でも理由なくいつでも契約を解約できる内容の条項を指します。

 

 反対に,Termination with causeと表現された場合は,債務不履行など契約を解除されるべき原因があった場合の解除権のことを指しています。

 

 契約期間中に突然契約を途中で解約できるとすると,相手方は不安定な地位に立たされることになりますので,普通は,突然契約が終了するとはせず,一定期間余裕をもたせて,解除の通知をすることが契約書で義務付けられています。

 

 なお,もし解除の効力発生までの猶予期間が設けられておらず,通知の日に即時に解除されるという内容の条項の場合は,解除される側にとって不利益が大きすぎるのでせめて猶予期間を設けるよう修正を要求すべきです。

 

 即時解除になっている場合は,裁判所などで無効と判断される可能性も高くなるでしょう。

 

 猶予期間がある場合は,例えば,「サプライヤーは,販売店(Distributor)に対し,契約終了日の少なくとも3カ月前までに書面により通知をすることにより,いつでも理由なく本契約を解除することができる。」などと定められます。

 

 当然ですが,上記の例の場合,販売店としては,このまま受け入れると非常に不安定な立場となります。

 

 せっかく,広告宣伝費などのコストをかけて,サプライヤーの商品をブランディングしてきたにもかかわらず,いきなり,何の理由もなく,「3ヶ月後に契約を終了します。」とサプライヤーから通知されれば,今までの努力が水の泡となってしまうわけです。

 

 これが,例えば,販売店が,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成できなかったなどの,債務不履行・契約違反を理由とした解除(Termination with cause)であれば,まだ納得できるでしょう。

 

 ところが,中途解約条項は,販売店に問題がなくとも,サプライヤーの都合で,いつでも契約が解除されてしまう点に問題があるわけです。

 

 このような条項が挿入された販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を提示された販売店が対処するには,どのような方法があるでしょうか。

 

 一つは,削除を求めるというのがわかりやすく,最も販売店に都合が良い方法となります。

 

 ただ,削除すると,サプライヤーは,契約期間中は契約を維持しなければならなくなり,販売店のパフォーマンスが期待通り出ない場合でも簡単に取引を打ち切れないため,サプライヤーの利益を害しますので,サプライヤーが簡単には受け入れないということも考えられます。

 

 その場合の説得方法としては以下のようなものが考えられます。

 

 通常は,販売店が債務不履行・契約違反をした場合の解除条項(Termination with cause)が販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に挿入されているはずです。

 

 そして,販売店には販売促進活動の努力義務や,最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)のノルマが課されていることがあります。

 

 販売店のパフォーマンスなど問題があって,サプライヤーが契約を解除したいのであれば,これらの義務違反を理由とした解除で対応すれば良いと説得を試みることが考えられます。

 

 次に有効な対策は,通知による契約終了日までの猶予期間を長くするという方法です。

 

 3カ月前に通知するというのを,半年前や,1年前にできれば,その間に,別の事業にシフトする,別の商品にシフトするなど,販売店も対策が立てやすくなります。

 

 また,別の視点としては,サプライヤーが一方的に解約できるという内容を,双方が解約できるというフェアな内容に修正するという方法も考えられます。

 

 ただ,この方法は,例えば,販売店の最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)のノルマが過大であるというようなことがない限り,基本的に販売店側から販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を途中で解約したいということはあまりないと思いますので,フェアな内容にしてもあまり販売店には実益がないということも考えられます。

 

 このように,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)においては,契約期間をどうするかだけではなく,この中途解約条項(Termination without cause)がないかどうかもチェックする必要があります。

 

 販売店としては,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)においてせっかく契約期間を長期で獲得したと喜んでいても,この中途解約条項(Termination without cause)があることによって,結局は長期の契約期間は意味がないということにならないようにしなければなりません。

 

 理由のない解約をいつでも認める中途解約条項は,契約期間を実質的に無意味にするほど強力な意味を持っていることがあるのです。

 

 もちろん,準拠法によっては,このような一方的なサプライヤーの都合による解約から販売店を守る法律や判例があることもありますが,それに頼り切るのは危険が大きいでしょう。

 

 そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際には,この中途解約条項(Termination without cause)の存在と内容に注意する必要があります。

 

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