英文契約書の相談・質問集173 取引までに契約書を作る時間がないのですがどうしたら良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「取引までに契約書を作る時間がないのですがどうしたら良いですか。」というものがあります。
前提として,このような事態となることは極力避けたほうが良いです。
契約書がない状態で海外企業との取引に入ると,どの国の法律が適用されるかもわからないまま,そのわからない法律や判例にすべての結論を委ねるということになりますので,非常に危険であり,不安定になります。
これが,日本企業同士の取引であれば,日本法が適用されますから,調べられますし,日本法は日本語で書かれていますので,理解できます。
そのため,それほど危険性は高くないといえるでしょう。
ところが,当然ですが,特に海外と取引する場合,全く事情が異なります。
海外の法律が適用されるとなった場合,英語であればまだ良いですが,難解な言語でしか公になっていないと,読める日本人がそもそも少なくなってしまい,法律自体理解できません。
また,法律はたびたび判例によって修正されたりしますので,法律の字面を理解しても,それでリスクヘッジできたことにもなりません。
現地の弁護士に依頼することになるでしょうが,コストがかかりますし,そのような事態を最初から想定しなければならないのは,やはり不利益が大きいです。
そのため,当然ですが,きちんと契約書を交わしてから取引するのは必須条件だと思います。
ただ,現実には,交渉のきっかけや交渉過程から,どうしても満足のいく契約書を最初から準備できないということもあります。
このような場合,何らの書面も交わさないで取引を開始しても良いのかという相談を受けます。
結論としては,簡単なもので良いので,契約条件の骨子を記載した覚書のようなものを交わしておいたほうが良いでしょう。
何も書面化されていないと,前述のとおり,何かあれば,事前に何も知らない外国の法律で解決しなければならないなどという事態になりかねません。
せめてそうならないように,代金支払期日,貿易条件,契約期間,独占権販売権の有無,準拠法,裁判管轄など,その取引でこれだけは決めておかなければならないという重要部分だけでも,書面化することをおすすめします。
そして,できれば,「その書面は当面の簡易のものであって,後に正式な契約書のドラフトを作成して送る」と申し添えておき,あとで,ゆっくりと英文契約書を作成するという流れにしたほうが良いです。
覚書で終わりにせず,近い将来正式な契約書を作成するということの了解を得ておくということです。
最初に覚書のような簡単なものであっても,一度書面化をしておけば,最初口頭だけで取引を進めておいて,あとで突然正式な契約書を作成するという流れより,相手方も書面を取り交わすことに対する抵抗感が減っていますから,受け入れやすくなると思います。
以上のように,ビジネスはスピードが大切ですから,十分な契約書が間に合わないということがあったとしても,覚書→正式契約書の流れでフォローすることをおすすめします。
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