英文契約書の相談・質問集174 合意更新の場合に交渉が期限切れになった場合どうなりますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「合意更新の場合に交渉が期限切れになった場合どうなりますか。」というものがあります。

 

 何らかの取引をするにあたり,英文契約書を作成する場合,通常,契約の有効期間(Term)を定めると思います。

 

 この場合,契約の有効期間が満了になった場合の取扱いについても,通常,契約書に規定します。

 

 例えば,「期間満了前の3ヶ月前までに,当事者の一方が相手方に対して,契約を終了させる旨を通知しない限り,従前と同一の条件で契約期間が更新される」(Renewal)という内容が定められることがあります。

 

 これは,自動更新条項と呼ばれています。更新しない旨の通知をしない限り,放置していれば自動的に契約期間が更新されるためです。

 

 ただ,例えば,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)などでは,サプライヤーとしては,自動更新条項にはしたくないと考えることもあります。

 

 販売店(Distributor)に独占販売権を渡しても,初期ステージでは,販売店(Distributor)がどの程度のパフォーマンスを発揮するのかがわからないので,最初からあまり長い契約を想定したくないという事情がある場合があるためです。

 

 もちろん,自動更新条項であっても,更新拒絶の通知を出せば,契約は更新せずに期間満了で終了するので,同じではないかという考えもありえます。

 

 ただ,自動更新条項にすると,契約を終了させる場合,「契約を更新しない」という意思を書面通知するというアクションが必要になります。

 

 そして,自動更新条項があるということは,特に問題がなければ更新が続くのだと販売店(Distributor)に期待させるという事情があります。

 

 そうすると,販売店(Distributor)が特に問題ない限り契約継続を期待しているのに,突然,期待を裏切る更新拒絶の通知をサプライヤーから受け取るという流れになるわけです。

 

 これは,販売店(Distributor)からすると相当なインパクトがあります。

 

 更新を期待していたのに,期待に反して更新しないという通知を受け取るわけですから,何かクレームを入れたいと思うかもしれません。

 

 これに対して,そもそも,期間満了で終了することが前提となっていて,単に契約期間だけが記載され,更新については一切触れていない場合はどうでしょうか。

 

 この場合,販売店(Distributor)は,契約は契約期間中のみ有効なのであり,「問題がなければそのまま契約が何度も繰り返されて長期にわたって継続するはずだ」という期待は抱かないのではないでしょうか。

 

 もちろん,販売店(Distributor)のパフォーマンスがサプライヤーの期待以上に良く,サプライヤーに利益が大きいという状態になれば,交渉により期間の延長,または,いったん契約が終了した後での再契約が行われるかもしれません。

 

 ところが,自動的に更新が想定されているわけではないので,仮に再契約がされなかったとしても,販売店(Distributor)側の受け止め方に差異が生じる可能性はあります。

 

 また,販売店保護法などの法律によっても,更新が予定されているかどうかにより,販売店(Distributor)の保護の程度が変わってくる可能性も考えられます。

 

 もちろん,サプライヤーとしては,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)において,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を定めて,パフォーマンスが悪い場合にはそもそも契約を解除できるようにしておくなどの別の対策も重要です。

 

 ただ,契約期間と満了による終了という場面を考えると,自動更新ではないほうが良いこともありうるわけです。

 

 話を本題に戻します。上記のような定めのほか,自動更新ではないけれども,「契約期間の満了の3ヶ月前から再契約または契約延長の協議をし,合意できれば再契約または契約延長をする」という条項を定めることもあります。

 

 この場合,上記の3ヶ月の交渉で更新条件がまとまらず,3ヶ月が経過してしまった場合,どうなるのでしょうか。

 

 準拠法(どの国の法律が適用されるか)にもよると思いますが,基本的には,合意に至らなかったので,そのまま契約期間の満了により契約は終了されると解釈されるのだと思います。

 

 ただし,再契約または契約延長の交渉を真摯に行わなかったり,新契約の条件を,従前の条件よりも大幅に自社に有利=相手に不利なように提案し,事実上交渉を行ったとはいえず,一方的に更新を拒否したと認められるような場合は,別の解釈もあるかもしれません。

 

 自動更新ではなく,協議・合意により再契約や契約期間の延長がありうるとの条項を契約書に入れた場合は,交渉を行う義務は生じますので,この点は注意しなければなりません。

 

 交渉が前提になりますので,この場合も,販売店(Distributor)などは「特段の問題がない限り再契約や期間の延長がされるだろう」と契約更新を期待するかもしれません。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際には,こうしたこともよく考慮に入れて,契約期間の満了や,更新条項を作成することが必要です。

 

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