英文契約書の相談・質問集185 間接(Indirect)・結果(Consequential)損害(Loss)とは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「間接(Indirect)・結果(Consequential)損害(Loss)とは何ですか。」というものがあります。

 

 英米法では,損害には,大きく分けて,①通常損害(General loss or damage)と,②特別損害(Special loss or damage)の二種類があるとされています。

 

 通常損害は,「当事者が契約に違反したら,その損害が通常発生することが予見可能(Foreseeable)である損害」のことを指します。

 

 この通常損害は,契約不履行により直接的に生じたものであることが多いため,直接損害(Direct loss or damage)とも呼ばれます。

 

 これに対置される損害の概念が,特別損害(Special loss or damage)となります。

 

 特別損害は,「当事者が契約違反をしても,その損害が通常発生するとは予見できない(Unforeseeable)損害」のことをいいます。

 

 この特別損害は,契約不履行により生じる間接的,結果的な損害であることが多いので,間接損害(Indirect loss or damage),結果損害(Consequential loss or damage)とも呼ばれます。

 

 特別損害は,「契約違反をした当事者が契約締結時(英米法の場合)にその特別の事情を知っていたか,または,合理的に考えて知りうべき状態にあって,予見可能だったといえる場合に限り,契約違反をした当事者に賠償責任が生じる損害」のことを指します。

 

 ちなみに,日本法でもこの特別損害の考え方はほぼ同じですが,契約違反をした当事者が,特別な事情を予見可能であったかどうかの判断をする時点が,契約締結時ではなく,債務不履行時であることが異なる点です。

 

 いわゆる逸失利益(Loss of profit)もこの特別損害に含まれることがあると一般的に考えられています。

 

 逸失利益(Loss of profit)とは,例えば,売主がある土地建物を買主に売る予定が,売主が債務不履行をして不動産を買主に売却できなかったことにより,買主が転売して得る予定であった利益が典型例です。

 

 この不動産の売却価格が相場価格であれば,逸失利益は通常損害として賠償の対象になるでしょう。

 

 しかし,仮に,買主が,ある特別な転売先を見つけていて,簡単な建物のリフォーム後に相場の2倍の代金で売却することになっていた場合,この逸失利益は賠償対象になるでしょうか。

 

 この場合は,売主が,上記のような事情を予見できたかどうかで賠償しなければならないかどうかが決まってくることになるというのが,逸失利益が特別損害に当たるということの具体的意味です。

 

 このように,特別損害(Special loss or damage)は,予見可能性というあいまいな基準で賠償義務のあるなしが決まってくるので,不安定な概念です。

 

 そのため,英文契約書では,よくこの特別損害(Special loss or damage),すなわち,間接損害(Indirect loss or damage)や結果損害(Consequential loss or damage)の賠償責任を免除するという免責規定が置かれます。

 

 特別損害(Special loss or damage),すなわち,間接損害(Indirect loss or damage)や結果損害(Consequential loss or damage)の賠償責任は,不安定なのと,認められると賠償額が高額になる傾向にあるので,そのような賠償責任は排除しようという考えからです。

 

 海外取引では,割と,特別損害(Special loss or damage),すなわち,間接損害(Indirect loss or damage)や結果損害(Consequential loss or damage)の免責については,相手方当事者にも受け入れられる傾向にあります。

 

 もっとも,そもそも,何が通常損害で何が特別損害に当たるのかは,実際には分類が困難だと言われています。

 

 したがって,上記のように簡単に通常損害と特別損害を分類して,どちらに当たればどういう条件で賠償請求が認められると教科書事例として学習しても,現場では役に立たないこともよくあります。

 

 一つ言えるのは,間接損害や結果損害については,賠償額が広がる傾向にあるので契約書で免責を定めることが実務上多いですし,それには一定の合理性が認められるということでしょう。

 

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