英文契約書の相談・質問集192 独占契約違反をされたので損害賠償請求できますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占契約違反をされたので損害賠償請求できますか。」というものがあります。
例えば,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結している場合を考えてみましょう。
この場合,販売店(Distributor)は,独占販売権を有していますので,サプライヤーは,販売店(Distributor)に独占販売を許した商圏(Territory)において,第三者に対して商品を卸すことは許されないことになります。
ところが,これに違反して,サプライヤーが他の業者に商品を卸してしまった場合,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)違反ということになります。
この違反行為に対して,販売店(Distributor)が取りうる対抗策は,契約書の内容によって異なりますが,通常は,損害賠償請求や契約解除という対抗手段が契約書に定められています。
そのため,損害賠償や契約解除が対抗策として考えられるのですが,販売店(Distributor)としては,契約を継続したい場合は,契約の解除という選択肢は取りませんので,損害賠償請求をすることを検討することになります。
しかしながら,販売店(Distributor)は,契約を継続したいと考えているため,損害賠償請求も難しいというのが現実的なところです。
なぜなら,もし販売店(Distributor)が執拗にサプライヤーに対して,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)違反に基づく損害賠償請求を行うとなると,サプライヤーとの関係は悪化すると見込まれるからです。
関係が悪化すると,サプライヤーから注文を拒否されたり,契約期間満了時に更新を拒絶されて契約を終了されてしまう危険があります。
販売店(Distributor)は,あくまでサプライヤーという他人の商品を扱っているため,サプライヤーとの関係ではどうしても立場が弱いところがあります。
もちろん,契約違反があることは事実ですので,その点について責任を追求したいと考えるのは正当なことなのですが,現実的には,損害賠償を実現するのはなかなか困難ということになります。
通常は,サプライヤーに事実関係を確認して,もし本当に他の業者に卸したというのであれば,その理由や意図を確認し,今後二度とそのようなことをしないように依頼して関係修繕を図ることが最優先だと思います。
中には,ネット注文についうっかり対応してしまったとか,担当者が交替し引き継ぎがきちんとなされていなかったために,新しい担当者がうっかりミスで受注してしまったということもあります。
このような場合は悪意があるわけではないので,二度としないように合意すれば解決するということもあるでしょう。
もし,サプライヤーが意図的に,そして継続的に大量に第三者に対し商品を卸していたというような場合であれば,もはや信用できないでしょうから,そういうときは,販売店(Distributor)のほうから契約を解除し,そのうえで徹底的に損害賠償請求を行うということも考えられます。
この場合でも契約を解除する必要は必ずしもないのですが,前述したとおり,現実的には契約を継続しながら,徹底的に契約違反の責任追及を行うというのは,難しいところがあるので,契約を解除してしまい,あとは損害賠償請求の問題だけにしてしまうというのも一つの手法です。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)のような継続的な契約は,信頼関係が非常に大切ですので,簡単に損害賠償請求で片付ければ良いということにはならないことが多いので,安易にサプライヤーに問題があれば損害賠償請求をすればよいと考えるべきではないでしょう。
→【英文契約書の相談・質問集193】海外の企業から合弁会社を作ろうと誘われているのですが。

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