英文契約書の相談・質問集193 海外の企業から合弁会社を作ろうと誘われているのですが。

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英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外の企業から合弁会社を作ろうと誘われているのですが。」というものがあります。

例えば,日本のメーカーがイギリスの企業から引き合いを受け,商品の輸出販売を計画したとします。

この際にイギリスの企業が販売店(Distributor)となって,日本のメーカーとの間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,自らが商品を仕入れてイギリスで販売展開していくというのが典型例です。

こうした商品の輸出による海外進出を「間接進出」(メーカー自らが外国に進出して商品を販売するのではなく他社である現地企業を利用して間接的に進出しているため)と呼んでいます。

これに対し,この段階で,イギリス企業が自ら販売店(Distributor)とはならずに,イギリス企業と日本のメーカーが共同出資してイギリスに現地法人を設立して,その現法に商品を販売展開させようと持ちかけられることがあります。

こちらは,自社が出資して外国に自ら会社を設立して進出することになるので「直接進出」と呼んでいます。

ビジネス上の理由は当然いくつもあると思いますが,法的な側面,リスクマネジメントの観点からすると,最初から共同出資による合弁会社設立のモデルはできるだけ避けたほうが良いです。

そもそも,信頼できる相手かどうかもわからないのに,共同出資して,現法を設立・運営するのはリスクが高すぎます。

経営陣の構成をどうするのか,経営上の意思決定をどのように行うのか,利益が出た場合の配当はどうするのか,事業から撤退したくなったらどうするのか,売却したくなったときに株式の売却はどうするのか,現地法人の清算はどうするのか,など決めなければならないことが一気に増えます。

また,ビジネスが損益分岐点を超えず,利益が出ていない間は一致協力して事業経営にあたることが多いので良いのですが,利益が出るようになってくると,経営方針についてかなりの確率で意見対立が起こります。

共同経営は,利益が出ていないときは,歯を食いしばってがんばるだけなので揉めることは少ないのですが,利益が出始めるとその利益をどうするかについてよく揉めるのです。

いったん経営方針が合わなくなると,現実的に関係修復は難しいです。

ところが,日本企業も出資をしているため,簡単にエグジットできないのが問題なのです。合弁による進出は,撤退を困難にします。

これが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)であれば,話は簡単です。

ビジネスの方針が合わなくなれば,期間満了などを理由に契約を終了させればそれでおしまいです。

もちろん契約終了の効果を巡って販売店と揉めることはありえますが,少なくとも株式をどうするか,現地法人の清算をどうするかなど,より面倒なことを考える必要がないわけです。

契約継続中も,日本のメーカーが行うことは基本的に商品を卸すということがメインであり,現地のマーケティング活動,販売活動は販売店(Distributor)が自己の費用負担と責任で行ってくれます。

そのため,経営方針,マーケティング戦略,コスト計画などで意見を異にして対立するということもありません。

もちろん,メーカーと販売店(Distributor)との関係でも,マーケティング戦略やブランディング戦略などで意見を異にしてぶつかるということはありますが,会社の内部で意見対立が生じているわけではないので,対応策がたくさんあるのです。

また,合弁会社は外国に設立されていますので,その運営については基本的に現地の会社法の類の法律が適用されます。熟知していない法律が適用されるというのもリスクの一つです。

このように,合弁による進出は,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)による進出に比べて,かなりリスクが高く,とりわけ出口戦略が難しいです。

そのため,少なくとも,最初から合弁会社を設立して海外展開をすることはあまりおすすめできません。

まずは,危険の少ない販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)による間接型の進出を行い,実績を見てから,よりリスクの高い合弁や独資による現地法人設立による直接的な海外展開を目指すべきだと思います。

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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