英文契約書の相談・質問集195 相手が修正しにくいように契約書は画像送付のほうが良いですか。

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英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手が修正しにくいように契約書は画像送付のほうが良いですか。」というものがあります。

自社が英文契約書のドラフト(ひな形)を作成し,相手方に見せるという流れの場合に,自社に有利になるように,相手方に修正をしてほしくないと考えることがあります。

この場合に,相手方が契約書を修正しにくいように,Wordファイルなどで契約書を送らずに,一度印刷した契約書を画像化して,画像で相手方に送付するという方法があります。

また,印刷した紙の契約書そのものを相手方に郵送で送付するというパターンもあります。

この場合,相手方は修正などをしたくても,手書きでしたり,いちいち修正部分以外の部分の文章までタイプしたりしなければならなくなり,手間がかかります。

これに加えて,契約書の字のフォントを読みにくくするために小さくしたり,契約書のレビュー期間を短く要求していたりすると,余計に相手方は契約書の修正がしにくくなります。

こうしたテクニックというのは,実際に行われることはあります。

では,自社が契約書のドラフトを作成したときもこうしたテクニックは使ったほうが良いでしょうか。

私は,やめたほうが良いと思っています。

確かに,取引関係にはバーゲニングパワーなどが関わってきますし,利益相反関係にある側面があるので,自社に有利な条件で契約するには,自社が契約書を有利に作り,なるべく相手方に修正させないという姿勢自体は間違いではないでしょう。

ただし,例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)など,長期的な関係を維持してはじめて自社の利益にもつながるという継続的契約の場合には,綺麗事をいうようですが,やはり相手方との信頼関係が大切です。

契約書の締結という初期に行われる重要な行為について,上記のような小手先のテクニックを駆使して嫌がらせのような行動をすれば,相手もそのような目で見るようになるでしょう。

そうすると,中長期的にみてうまくいきません。

また,画像で送ったところで,「Wordファイルなどで送り直してください」と相手方に言われることもありますし,それに対して「法務が急いでほしいといっているので」などと苦しい言い訳をするはめになり,そもそも画像で送った=修正させないということにもなりません。

修正をさせたくないのであれば,「この契約書は修正できず,このままの条件で取引するかどうかの二者択一です。」と素直に伝えたほうがよほどマシだと思います。

契約交渉では,上記以外にも様々なテクニックのようなものがあるのですが,私はあまりそういうものはうまくいかないと思いますし,使うべきではないと思っています。

特に文化も法律も言葉も違う海外取引では,ただでさえ意思疎通が難しく疑心暗鬼になりがちです。

そのため,小手先のテクニックに走るのではなく,求めるべきものははっきり伝えて,譲歩できるところは隠さずに述べるという態度のほうが,最終的に自社の利益になると思います。

修正できないような状態で契約書を送付して契約内容を半ば強制したとなれば,のちにトラブルになった際も,相手方から「そもそも契約内容に納得していないのに,修正を受け入れてもらえず強引にサインをさせられた」と主張され,紛争が深刻化する可能性もあります。

これでは,紛争を予防するために契約書を作成したはずなのに本末転倒になってしまいます。

あまり,交渉テクニックのようなものに左右されず,正直に誠実に対応することがやはり基本だと思います。

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【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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