英文契約書の相談・質問集198 当社に不利な事実は弁護士に伝えなくて良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「当社に不利な事実は弁護士に伝えなくて良いですか。」というものがあります。
結論から申しますと,トラブルや紛争になったときに,弁護士に相談に行く場合,自社に有利なことも不利なことも,すべて伝えることが大切です。
もし,不利なことを弁護士に伝えていないと,そもそも適切なアドバイスがもらえないので,その時点で自社にとって不利益です。
相手に知られていなければ,そのまま隠し通せるから,弁護士に言わなくても問題ないはずだと考えるかもしれませんが,それは間違いです。
どのようなきっかけでその不利な事実が露見するかわかりませんし,もし後で露見すれば,隠していたことがわかってしまうことがありますので,不利益が大きくなる場合があります。
確かに,日本の訴訟制度では,必ずしも自社に不利な事実や証拠をすべて裁判所に提出しなければならないということにはなっていないので,不利な事実や証拠も必ず白日の下にさらさなければならないわけではありません。
ただ,自社が依頼した弁護士は自社の味方ですから,その弁護士には包み隠さずすべてを伝えるほうが良いです。
自社に不利な事実もわかったうえで,最良のアドバイスがもらえるはずだからです。
事実をすべて伝えていないと,必ずあとでほころびが出ます。事実を隠したり曲げたりすると,必ず違和感が引き起こされ,良い解決ができなくなります。
どの事実を相手に伝え,どういう解決策を取るのが良いのかは,プロである弁護士に任せ,どの事実を伝えるか伝えないかを自社で判断しないことが重要です。
あとで,重要な事実が発覚すると,それまでの交渉や訴訟遂行がすべて水の泡になるというレベルの事態になることもありえますので,この点は非常に重要です。
隠されていた事実が結論に影響を与える大きなものであると,勝敗が逆転する可能性を生じるだけではなく,和解交渉が進んでいた場合,交渉そのものが決裂する可能性が出てしまいます。
自社が「不利なので隠したい」という事実が本当に不利なのか,どの程度不利なのかは,法律家である弁護士に評価してもらわないとわかりません。
弁護士に不利な事実の評価をしてもらったうえで,最善策を考えてもらうほうが,結果的にはベストな解決ができる可能性が高まると思っています。
また,上記は日本での話ですが,例えば,イギリスやアメリカですと,証拠開示制度(Disclosure/Discovery)という制度があり,裁判になると,自社に不利な証拠もすべて提出しなければなりません。
イギリスでは,訴訟の前に相手方が保有する証拠を開示するように裁判所に申し立てるという制度もあります。
そのため,隠し通すことはそもそも制度上できないので,弁護士にすべて伝えることです。
ちなみに,イギリスやアメリカにおいても,クライアントと弁護士の通信は, Attorney Client Privilege(弁護士・依頼者間の秘匿特権)という制度により,秘密が守られますので,その点はご安心下さい。
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