英文契約書の相談・質問集160 金銭支払いトラブルの交渉が有利になるポイントはありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「金銭支払トラブルの交渉が有利になるポイントはありますか。」というものがあります。

 

 まず当たり前のことをいうようですが,自社の側が金銭支払いを求めているということは,相手に物理的に金銭を保有されているということを意味しますので,この時点でかなり不利です。

 

 どういうことかというと,金銭の支払いのトラブルにおいては,基本的にお金を追いかける立場にある当事者が常に不利なのです。

 

 要するに,「お金払って下さい。」という側は不利で,「お金払う必要はないはずです。」という側が有利になってしまうのです。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で,フランスのメーカーが日本の販売店(Distributor)に商品を900万円で卸したとします。

 

 代金は前払いとなっていたので,商品の出荷前に販売店(Distributor)は全額を支払いました。

 

 商品は,お皿とかマグカップなどの陶器製品だとしましょう。

 

 その後,商品が到着したので,検品をしてみたところ,およそ3分の1の商品で,絵柄のプリントが斜めになってずれていることがわかりました。

 

 販売店(Distributor)は,日本ではこのような商品は,アウトレット品になってしまうため,欠陥品であるから,代金300万円を返金するよう相手に要求したとします。

 

 これに対し,フランスのメーカーは,フランス国内では問題なく正規料金で売れるので,欠陥には当たらないから応じられないと反論したとします。

 

 こうなると,日本側ががんばって日本ではプリントのずれがあるだけでもまともに売れず,欠陥品と考えるべきだということを力説して,フランスのメーカーを説得しなければ返金を受けられないということになります。

 

 仮に,日本の販売店(Distributor)の主張が法的に正しいと仮定しても,フランスのメーカーが納得してくれない限りは,裁判などで無理やり権利を実現するしかなくなります。

 

 ただ,300万円程度の金額ですと,外国企業相手に裁判や仲裁をすれば弁護士費用だけで赤字になる可能性が高く,採算の問題で現実的にはできないという事情もあります。

 

 法的には日本の販売店(Distributor)の主張が正しくとも,それを強制できるとは限らないのです。

 

 では,契約書において,代金の全額前払ではなく,一部前払いが定められていたとしたら事態はどう変わっていたでしょうか。

 

 例えば,販売店(Distributor)は,商品の出荷前に600万円を入金し,検収完了後に,300万円を支払うと定められていた場合です。

 

 この場合は,販売店(Distributor)は,全体の3分の1に相当するプリントのずれがある商品の代金300万円をまだ支払っていません。

 

 そのため,上記の問題が生じたときでも,日本の販売店(Distributor)は,3分の1が欠陥品だから,300万円を支払わないという主張ができるのです。

 

 違いがわかりますか。

 

 この場合は,フランスのメーカーの側ががんばって,それは欠陥品には当たらないから,代金支払義務があるので,販売店(Distributor)は300万円を支払わなければならないと主張し,販売店(Distributor)を納得させなければならなくなるのです。

 

 販売店(Distributor)が納得せずに払ってくれなければ,今度はフランスのメーカー側が訴訟などを提起する必要があるので,弁護士費用で赤字になるのであれば,フランスのメーカー側が訴訟もできず泣き寝入りの可能性が出てくるわけです。

 

 もちろん,一回限りの取引でなければ今後の関係も考えなければならず,このような「喧嘩状態」は避けなければならないので,他にも考慮しなければならない要素があります。

 

 ただ,特に一回限りの売買などでは,上記のようにどこにお金が現実にあるかによって,交渉時の立場の有利不利が大きく変わってくるのです。

 

 そのため,契約書を作る際は,後にトラブルになった場合を見据えて,できるだけ,お金を追いかける側に回らないよう,回るとしても少額で済むように工夫して条件を定める必要があります。

 

 いったん,相手にお金を渡してしまうと,いくら自社の主張に理論上の法的優位性があっても,事実上は追いかける側になって不利になってしまうので,本当にそのタイミングで支払って問題ないかどうか,よく検証する必要があるでしょう。

 

 法的に正しいことがいつも結論になるわけではないことは意識しておく必要があるでしょう。

 

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