英文契約書の相談・質問集204 弁護士費用について注意点はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「弁護士費用について注意点はありますか。」というものがあります。
弁護士費用には,大きく分けて,①着手金・報酬金(Lump-sum)の場合と,②タイムチャージ(時間制報酬・Hourly Rate Charge)の場合があります。
日本では,私のような企業法務を中心に扱っている弁護士は②のタイムチャージが通常で,それ以外の分野を扱っている弁護士は①の着手金・報酬金を適用している方が多いと思います。
海外では,国にもよりますが,圧倒的に②のタイムチャージが多い印象です。
これらの弁護士費用の定め方については,それぞれに注意点があります。
まず,①の着手金・報酬金については,報酬金は成功報酬ですので,例えば,1,000万円の損害賠償請求訴訟であれば,いくら分訴訟で勝訴できたかによって報酬金が変わってきます。
例えば,1,000万円勝訴できた場合と,500万円勝訴できた場合では,報酬金が異なり,当然,1,000万円勝訴できたほうが報酬金は高くなるわけです。
このことに関連して注意しなければならないのは,交渉などを弁護士に依頼する場合,何を獲得したくて弁護士に依頼するのかをきちんと合意しておくことです。
例えば,自社としては,損害賠償金の支払いよりも,相手方の今後の妨害行為などを食い止めることが依頼の目的の中心だというような場合に,①の着手金・報酬金で依頼してしまうと,弁護士は損害賠償金を多く回収したほうが報酬金は高くなるので,そちらに意識がいくということが無きにしもあらずということになります。
もちろん,依頼者の利益に反して弁護士が行動することは各国の法律で禁止されていると思いますが,このような疑いが生じてしまうのは信頼関係の構築上問題があります。
これでは,自社の本当に獲得したい利益とは矛盾することになってしまいかねないからです。
また,着手金・報酬金ですと,弁護士費用は請求額の◯%というように決まるため,どうしても,請求額が低額だと,弁護士費用が低くなりすぎて,そもそも依頼を受けてもらえないということが起こります。
これに対し,②のタイムチャージであれば,いずれの点も心配はなく,単純に弁護士がその件で動いた分だけ弁護士費用となるということです。
タイムチャージの注意点は,請求額に関係なく,弁護士が動いた分だけ弁護士費用がかかるので,案件が長引くと,弁護士費用が高額になりがちな点が一つ挙げられます。
例え依頼者の相手方に対する請求額が低額であっても,請求額が低額なので弁護士がかけなければならない時間が短くて済むということには必ずしもなりません。
そのため,依頼者の請求額を弁護士費用が上回ってしまい赤字になるという見積もりになることもありえます。
また,タイムチャージは,事前の見積もりが難しく,依頼する時点で総額いくらかかるのかがわかりにくいという弱点があります。
特に交渉案件など相手方が存在する案件の場合,どのくらい案件が長引くかは,相手の対応次第というところがあります。
さらに,裁判でも,相手方に加え,裁判所が登場しますので,裁判所がどの程度速く訴訟を進行してくれるかによっても,かかる時間が変わってきて,弁護士費用が左右されます。
このような場合は,最終的にいくらかかるかがより不透明になります。
その他にも,①と②の組み合わせで弁護士費用が定められたり,②で金額の上限を設定するキャップ制というものが定められることもあります。
弁護士費用には以上のような種類と注意点がありますので,日本の弁護士でも海外の弁護士でも依頼する際には,これらの点に注意して,納得したうえで契約することが大切です。
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