英文契約書の相談・質問集208 独占的販売店契約の対象商品はどのように決めたら良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「独占的販売店契約の対象商品はどのように決めたら良いですか。」というものがあります。
独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の対象となる商品の範囲は,メーカーは狭くしたいでしょうし,販売店(Distributor)は広くしたいと考えるのが一般的でしょう。
たまに,「メーカーが取り扱っている商品すべてが対象となる」とされている独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を見ますが,これはメーカーには不利です。
これまでの製品とはジャンルが異なる新製品ができたときなども,独占販売権の対象となってしまい,その販売店(Distributor)が販売チャネルを持っていないにもかかわらず,新商品について他の販売店(Distributor)を指名できないということになってしまうからです。
そのため,メーカーとしては,「別紙に記載した商品に限る」とか「一定のブランド名が付された商品に限る」などとして,商品を絞って独占販売権を与えるべきでしょう。
他方で,販売店(Distributor)としては,別紙に記載された商品以外に同じジャンルの新しい商品が登場したら,その独占販売権も取得したいと考えるでしょう。
その場合,同一のブランド名が付されていれば,自動的に新商品も独占販売権の対象になるという条項を英文契約書に入れることが考えられます。
ただ,このような方法ですと,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)が商品の個数や注文金額で決まっていると,新商品が加えられても,特にノルマは上がらず,メーカーにはあまりメリットがないということがありえます。
そのため,First Refusal Rightを販売店(Distributor)に渡しておくにとどめるという方法もあります。
どういうことかというと,新商品が発売されることになった場合,その何ヶ月か前にメーカーは販売店(Distributor)に,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)の増加などの条件を提示して,その商品の独占販売権を販売店(Distributor)が取得したいかを最初に聞くということです。
そして,販売店(Distributor)がその条件を飲むならその新たな商品は独占販売権の対象に加えられるし,もし拒否するのであれば,その商品についての独占販売権は,メーカーは他社に渡すことができるということになります。
メーカーは,新商品についての最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)などの条件を定めることができますし,販売店(Distributor)としても,他社よりも前にオファーを受けることができるのでメリットがあります。
もし,販売店(Distributor)が断った場合でも,メーカーは第三者に対して,販売店(Distributor)に提示したオファーより緩い条件での提示はできないなどと契約書に定めておけば,メーカーとしても無謀な条件を販売店(Distributor)に提示することはなくなり,こうした条項が機能することがあります。
このように,独占販売権は,強い権利ですので,メーカーは最初からあまり広範囲にこれを販売店に渡してしまうと,あとで,後悔することがありますので,注意が必要です。
ちなみに,メーカーが独占販売権の対象商品を一定のブランド商品に限定している場合に,ブランド名を変えさえすれば,類似商品を独占販売店以外の他社に卸しても問題はないと安易に考えるのは危険ですので注意しましょう。
具体的にいうと,メーカーが販売店に独占販売権を渡しているのはAというブランド名の商品だったとして,これと競合する商品のブランド名をBとして,他社に卸して良いかという問題です。
これは,Aブランドと実質的に競合品となる商品を販売店以外の他社に売らせることになります。
そのため,販売店(Distributor)としては,面白くないですから,何らかのクレームを入れてくることが考えられます。
こうしたクレームを防ぐためには,だまし討のようにこのようなことをすることは避け,事前に今後の販売戦略を伝えておき,別ブランドで他社に展開させる可能性があることを販売店(Distributor)に伝えておくなどの対策をしておくことをおすすめします。
Aブランドがその販売地域でかなり知られている強いブランドなのであれば,それだけを扱うのだとしても,販売店(Distributor)にメリットがあるので,上記のような条件でも十分に飲む可能性があります。
販売店契約も長期的な信頼関係を前提とするものですから,契約書上形式的には問題ないとしても,相手の信頼を損ねるような行為を事前に何の説明もなく行うと,紛争の火種になることがあります。
「契約書上問題ない」とか「法的に問題ない」というだけで何でもしてよいということにはなりませんので,信頼関係の維持という点にも十分配慮をしましょう。
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