英文契約書の相談・質問集209 外国企業に対する強制執行は難しいですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「外国企業に対する強制執行は難しいですか。」というものがあります。

 

 外国企業に対する強制執行にはいくつかのパターンが考えられます。

 

 ちなみに,強制執行とは,相手が判決などで敗訴しても金銭の支払いなどの義務を履行しない場合に,判決などに基づいて相手の財産を強制的に差し押さえて競売にかけてしまい,金銭を回収する行為を指します。

 

 まず,1つ目は,日本で裁判をして勝訴した勝訴判決で,外国に存在する外国企業に対して強制執行するというパターンです。

 

 これはかなりハードルが高いでしょう。

 

 いくつか要件がありますが,重要なのが,外国企業が適切な判決の送達を受けていることと,「相互保証」といって,外国企業の所属する国も日本もお互いにその国の判決の執行を認めていることというものです。

 

 日本の裁判所の判決を外国企業が属する国の執行裁判所に申し立てて強制執行をするということになりますので,日本の弁護士と現地の弁護士とに協力してもらい,手続きすることになるでしょう。

 

 送達をめぐってはいろいろな問題や議論があります。一つ明らかなのは,時間と費用がかなりかかるということです。

 

 日本の判決を外国で執行するのは,かなり大変だということを理解しておくと良いと思います。

 

 2つ目のパターンは,日本での仲裁判断に基づいて,外国企業に対して強制執行するというパターンです。

 

 これは,日本の裁判所の判決で強制執行するより,簡単だと言われています。

 

 ニューヨーク条約という条約に加盟している国に属する外国企業に対しては,判決執行よりも簡易な手続きで仲裁判断による強制執行ができます。

 

 海外取引に関する英文契約書では,契約書に裁判を前提とした裁判管轄(Jurisdiction)条項ではなく,仲裁合意(Arbitration)条項が選択されることが多いのは,主にこのためです。

 

 3つ目のパターンは,外国企業が所属している国の裁判所で勝訴判決を取得し,これによって外国で強制執行するパターンです。

 

 最後に,外国企業が所属している国で仲裁をして仲裁判断を取得し,これによって外国で強制執行するというパターンもあります。

 

 これらは,現地の法律に基づいて判決や仲裁判断を取得し,現地の法律に基づいて強制執行するので,現地国内で手続が完結します。

 

 そのため,1つ目や2つ目のパターンより,簡便で,かかる費用や時間も少なくて済むでしょう。

 

 つまり,契約段階で,後に強制執行を相手の外国企業に対して行う現実的可能性がそれなりに高いのであれば,あえて日本の裁判や仲裁を選択しないということもありえるわけです。

 

 もちろん,外国で裁判や仲裁を行うこと自体が大変で,時間や金銭を要します。

 

 また,外国での裁判であれば,外国企業に有利な判断が出されないとも限りません。

 

 そのため,強制執行のことだけを考えて相手の国での裁判や仲裁を選択するのは危険ではありますが,強制執行にフォーカスすれば,そのような選択もありうるということになります。

 

 なお,日本でも相手の国でもない中立な第三国の判決や仲裁判断で外国企業に対し強制執行をするというパターンもありますが,これは,日本の判決や仲裁判断を執行するよりもさらにハードルが高いといえるでしょう。

 

 弁護士の選任のことを考えても,第三国の弁護士を雇い,まずは第三国において裁判や仲裁で勝利をして,今度はその判決や仲裁判断に基づいて,強制執行を行う国の弁護士を雇い,強制執行を行ってもらう必要がありますから,ハードルが高いことがわかるでしょう。

 

 もっとも,第三国での裁判や仲裁は,どちらかの国で行うよりも判断がフェアになるとか,どちらかの企業に裁判や仲裁を行う上での負担が偏らないとかの理由で選択されることがあります。

 

 このように,どの国で訴訟や仲裁をするかは,一つのことを考えて選択すれば良いという問題ではありません。

 

 そのため,この選択は難しいのです。契約内容や強制執行の可能性などを見極めながら顧問弁護士と相談しながら決定するのが良いでしょう。

 

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