英文契約書の相談・質問集211 第三者の知的財産権を侵害しない保証をする場合の注意点は?

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「第三者の知的財産権を侵害しない保証をする場合の注意点は?」というものがあります。

 

 日本のメーカーが海外企業との間で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,海外企業を販売店(Distributor)に指名して自社製品の販売展開を考えているとします。

 

 その際に,販売店(Distributor)から出される要望の一つが,日本のメーカーの商品が,販売店(Distributor)の現地国内にいる第三者の知的財産権をしないことを保証してほしいというものです。

 

 販売店(Distributor)からすると,日本のメーカーの商品は当然ですが自社で製造しているわけではないので,その商品を国内で売っていたら,知的財産権侵害のクレームを第三者からされ,損害賠償責任を負わされるなどという事態は避けたいでしょう。

 

 そのため,上記の要求は一見まっとうなもののように思えます。

 

 ただ,日本のメーカー側からすると,日本国内であれば,自社の商品が他社の知的財産権を侵害していないことについては調査済みで,保証することに抵抗はないということでしょうが,いざ外国となると,十分な調査ができず,保証はできないということになりやすいです。

 

 もちろん,特許権や商標権などの知的財産権をすでに現地で登録済みということであれば,これらの権利をメーカーが有しているのですから,他社の権利侵害をすることは考えにくく,保証することで問題ないでしょう。

 

 問題は,このような登録がなされているわけではなく,何らかの知的財産権侵害の可能性が潜在的にあるという場合です。

 

 この点,日本のメーカーが資金も潤沢な大企業であれば,当然現地での事前の調査を済ませ,問題ないことを確認してから進出するということが可能でしょうが,リソースが限られた中小企業では,現実的にそう簡単にはいかないこともよくあります。

 

 もっとも,販売店(Distributor)のほうが知的財産権侵害のないことの保証が取引の条件だと譲らないような場合で,メーカーとしてもその販売店(Distributor)との取引を是非実現したいという事情があるときは,保証する方向で検討することになるでしょう。

 

 この場合は,多少コストがかかっても,現地国の知的財産権専門の弁護士に調査をしてもらい,自社の商品が他社の知的財産権を侵害する可能性があるかについての意見書をもらっておくことになるでしょう。

 

 そのうえで,英文契約書で,「メーカーの知る限りでは」(to the knowledge of the Manufacturer)という留保をつけた上で,他社の知的財産権を侵害していないことを保証するという条項を入れるのが一つの対処法です。

 

 このように対処しておけば,契約締結当時は侵害の事実を認識できず,後で侵害の事実が発覚した場合に,メーカーが免責される可能性が高まります。

 

 現実には,知的財産権侵害の心配がほとんどなさそうな汎用性の高い商品であれば,そこまでせずに知的財産権侵害がないことを保証しているケースも多いと思います。

 

 ただ,特に,取引金額が大きい機械類や,デザイン性が高く著作権侵害が問題になりそうな商品などでは,注意する必要があるかもしれません。

 

 外国のことですので,安易に知的財産権侵害がないことを保証するようなことをせず,きちんと事前に現実的リスクの高低を検証し,必要があれば調査を依頼するという対応が必要になります。

 

 特に中小企業の海外取引の場合,すべてのリスクをヘッジしようとするとコストが見合わないことがよくあります。

 

 ただ,重要な部分でコストをかけずに,リスクが顕在化すると大損害を受ける可能性があります。

 

 そのため,事前にリスク分析をして,リスクが顕在化したときに大きな損失につながる場合には,多少コストをかけてリスクマネジメントをしておくという姿勢が大切になります。

 

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