英文契約書の相談・質問集213 契約トラブルで準拠法が外国法の場合どうしたら良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約トラブルで準拠法が外国法の場合どうしたら良いですか。」というものがあります。
契約書の内容や解釈をめぐり,取引先とトラブルになった場合,準拠法がどこの国の法律に指定されているかは,はじめに確認すべき事項です。
日本法になっていれば,当然ですが日本の弁護士に相談すれば良いので,比較的対応は容易です。
ただ,相手が外国企業なので,国際紛争や海外取引のトラブル処理の経験がある日本の弁護士に相談するのがベターでしょう。
他方で,契約書に記載された準拠法が取引先の国の法律になっていたり,契約当事者が属する国ではない第三国の法律となっていた場合はこう簡単にはいきません。
例えば,フランスのメーカーと日本企業とが,日本企業が販売店となって販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を結んでいる場合に,準拠法がフランス法とされている場合を想定してみます。
そして,フランスのメーカーから日本企業の商品の宣伝方法が契約書の制限に違反しているというクレームが出されたとします。
この場合,フランスのメーカーの主張が正しいかどうかは,フランス法やフランスの判例に照らして検証しないとわかりません。
通常,日本の弁護士では,こうした分析ができませんから,最も妥当なのは,現地フランスの弁護士に依頼して,意見をもらう,場合によっては日本企業を代理してもらい,現地で交渉に入ってもらうことでしょう。
もっとも,海外の弁護士に依頼するには相当費用がかかります。
中小企業にとっては,最初から海外の弁護士に高額な費用を払って相談するというのはハードルが高いかもしれません。
また,信頼できる現地の弁護士を自分で見つけることができるのかという不安もあるでしょう。
そのため,ひとまず日本の弁護士に相談するというのも一つの方法だと思います。
たとえ,その日本の弁護士がフランス法をわかっていなくても,国際紛争を扱っている弁護士であれば,一般的なクレーム処理の方法や訴訟提起された場合の危険性などについては理解していることが多いです。
そこで,まずは日本の弁護士に相手のクレームに対する対処法を相談してみるというのは妥当な対応といえるでしょう。
場合によっては,相手にフランスの弁護士に依頼させ,相手の主張を根拠付ける法令や判例について,まずはそのフランス弁護士から意見書を出させるように要求することも考えられます。
もちろん,この場合,相手が依頼する弁護士ですので,相手の味方ではありますが,弁護士は多くの国で,法令等により,嘘を付いたり,相手を騙したりすることは禁止されていますので,一応確からしい意見を述べることになるでしょう。
少なくとも,取引先の担当者や経営者の「好き勝手な」言い分よりは法的に整理されたまともな主張が出てくると思います。
その内容がもっともらしければ,日本の弁護士にフランスの弁護士を紹介してもらい,自社で依頼するフランス弁護士の反論に相当する見解を聞くというステージに移っても良いと思います。
また,弁護士の意見書を出すように相手方に依頼したにもかかわらず,出てこないようであれば,相手の主張する内容には法的根拠がないという可能性が高まります。
もしそうであれば,主張立証がない以上,クレームには応じかねるとして交渉していくなどの対応が可能になるかもしれません。
このように,いきなり海外の弁護士に依頼しなくとも,まずは前提段階で行えることはあります。
上記とは逆の例で,日本企業側がフランスのメーカーに対してクレームを入れたいという場合は,まずは日本の弁護士に相談し,クレームの見立てをしてもらうのがよいでしょう。
必ずしも準拠法であるフランス法に基づいて判断しなくとも,クレームが法的に成り立ちうるかの当たりをつけるくらいは,国際的な紛争を扱う弁護士なら判断できると思います。
その後,一度日本の弁護士からクレームレターを出すこともあるでしょうし,必要に応じて現地の弁護士に依頼し,クレームレターを現地弁護士名義で出してもらい交渉をするという流れになると思います。
海外企業とトラブルになって,準拠法が外国の法律となっているからといって,ことさらに難しく考えず,まずは一番簡単にできることから順番に手続を進めていく必要があります。
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