英文契約書の相談・質問集215 工場に出荷前検査をさせる際の注意点はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「工場に出荷前検査をさせる際の注意点はありますか。」というものがあります。
日本企業が海外の工場に商品の製造を委託する際,工場に商品出荷前に商品の品質などについて検査(Inspection)をさせることがあります。
出荷前検査に合格した後,日本企業が商品を受け取ってから,日本企業側でも検査をすることもありますし,商品の性質上再度の検査が難しい場合は,出荷前検査のみで済ませるということもあります。
この出荷前検査で輸入者となる日本企業側が注意すべき点はどういう点でしょうか。
検査が,外国の工場で行われるので,日本企業は実際に自分の目で検査をすることができません。
そのため,単に検査に合格したという証明書(Certificate)を工場から提出させるだけではなく,その根拠も求めるようにしましょう。
例えば,写真を撮らせて送らせるとか,何か数値を計測する検査方法なのであれば,計測の工程と数値を示した表示部分の画像を送らせるなどの措置が必要です。
なるべく,主観ではなく客観的に商品に問題があるかどうかを判定できる資料をもらうようにしましょう。
上記の数値の例でいえば,数値を検査者が検査シートに書き写したとだけだと,書き写す時に数値を変えることが容易なため,数値を示した部分の画像などより証拠としての客観性が弱く,証拠価値が低いということになります。
もちろん,日本企業側でも商品の受領後に検査・検収を行い,問題があればクレームを入れるということは可能です。
ただ,商品が厳重に梱包されるなどの場合,輸入者側で商品を開けて再度検査ができないこともあります。
さらに,三角貿易のようなケースでは,そもそも輸入者の手元に商品が届かず,エンドユーザーの元に商品が直送されてしまいますので,輸入車が引渡し後検査を実施できません。
また,日本企業も検査ができる場合でも,すでに商品を受領した状態で問題が明るみに出るよりも,出荷前に問題が発覚したほうが問題の修正が容易であることは明らかです。
そのため,出荷前検査は重要な意味を持ちます。
特に海外の工場に商品の製造委託をする場合,海外の工場は日本の常識とは異なる常識を持っている可能性がありますので,過信せず,きちんと自分の目で確認する方法を模索すべきです。
相手の証明を鵜呑みにするのではなく,客観的な証拠をできるだけ送ってもらい,自分の目でも検証できるように交渉をしましょう。
この検収・検査作業を妥協していると,後で商品に問題があったときに,いつどこで問題を生じたのかを証明できないということになり,後悔することになりますので,手を抜かずに検査体制を構築するようにすべきです。
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