英文契約書の相談・質問集217 外国で類似商標がすでに登録されていたら諦めるしかないですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「外国で類似商標がすでに登録されていたら諦めるしかないですか。」というものがあります。
自社が使用している商標やロゴマークを商標登録して独占的に使用できるようにすることはビジネス展開の上で重要です。
海外展開する場合,同一または類似商標を使って模倣品を販売するなどの不当な行為に対して防御できるように,特に商標登録が重要な意味を持ちます。
ところが,外国で商標登録をしようとした際に,すでに自社が登録しようとする商標に類似した商標が登録されている場合があります。
この場合でも,まだ自社で商標登録ができる可能性が残されています。
というのは,商標には指定商品と指定役務というものがあり,どの商品群やサービスでその商標を登録し保護を受けたいのかを決めなければなりません。
そのため,もし自社が登録したい商標に類似する商標が登録されていても,登録された商品やサービスと,自社の商品やサービスが類似する群に入っていなければ,登録はできるのです。
また,仮に自社の商標を登録せずに,類似商標が登録されている国ですでにその商標を使用して自社で商品を販売しているという場合でも,登録された商標の指定商品の類似群に入っていなければ,他社の商標権を侵害していることにもなりません。
そのため,自社では商標登録せずに,その国でその商品名やロゴを使って商品を販売展開するということも可能です。
ただ,できれば商標は登録して知的財産権として守ったほうが賢明ですので,登録を申請するほうが良いとは思います。
このように,類似商標がすでに登録されているからといってすぐに諦めるのではなく,まずは,この指定商品・指定役務という点を確認する必要があります。
そして仮にこの点の調査をした結果,自社の使用している商標が,すでに登録されている商標の指定商品と指定役務類似の群に入ってしまっていたとします。
そうなると,自社の商標を登録することは原則としてできません。
このような場合には,いよいよ諦めるしかないでしょうか。
この場合には,「不使用取消審判」というものを行うことが考えられます。
これは,すでに登録されている商標を,その商標権者が長年にわたり使用していないという場合に,登録を消すことができるという制度です。
日本法でいうと,不使用取消審判請求の日から過去3年の間,日本国内でその商標が,指定商品または指定役務について使用されていないという場合には,当該商標の登録を取り消しうるとされています。
商標使用が問題になっている国に,これに類似する制度が存在すれば,これを使って,取消審判を申し立てることが考えられます。
以上のように,すでに自社と類似する商標が進出先の外国で登録されていても,すぐに諦める必要はありません。
すなわち,指定商品・指定役務が異なっていればなお商標登録は可能ですし,同じだとしても,他社が長らく使っていないということであれば,取消審判をしうるのです。
商標は長期的にビジネスを成長させるためには重要な要素なので,現地の弁護士に協力してもらうなどし,すぐに諦めることなく可能な方策を検討しましょう。
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