英文契約書の相談・質問集219 直接の取引先ではない業者に対しても責任は生じるのですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「直接の取引先ではない業者に対しても責任は生じるのですか。」というものがあります。
例えば,自社がある商品の製造を受託している製造業者だとします。
そして,製造過程に問題があり,気づかずに欠陥品を製造してしまったとします。
この商品は,注文者に納品されて,その後,注文者から,卸先→小売店→消費者など,様々な商流をたどって最終的に消費者=エンドユーザーにわたります。
製造業者のミスにより欠陥品が製造されているわけですが,実際に誰が欠陥に気づいてどこからクレームが来るかはわかりません。
例えば,消費者や小売店から損害賠償請求等のクレームがきたら,製造業者はこれに応じなければならないのでしょうか。
結論としては,原則として応じる必要はありません。
あくまで,損害賠償などの契約責任というのは,契約した当事者でしか主張できないからです。
上記の例でいうと,製造業者がクレーム対応しなければならないのは,直接の契約者である注文主に対してです。
契約もしていない者に対して契約責任を生じたのでは不合理ですから,あくまで契約に納得して契約関係に入った当事者間で責任を負うのが原則というわけです。
ですから,製造業者が直接契約していないその他の業者や消費者に対して責任を生じることは基本的にありません。
クレームは,契約を締結している関係の中で,つまり,消費者→小売店→卸業者→注文者→製造業者の順に数珠つなぎに上がってくるということになります。
基本的なことですが,契約責任は契約した当事者間で生じるものだということは理解しておくと良いでしょう。
だからこそ,最初に契約書に何を書くかは重要なのです。
もっとも,例外もあります。それは,契約責任ではなく不法行為責任を負う場合です。
不法行為は,契約関係にない場合の損害賠償責任などを規定しています。典型例は交通事故の損害賠償責任です。
交通事故は契約関係などない人同士が事故をして,責任問題を生じるものですので想像しやすいかと思います。
ビジネスにおける不法行為の事例としては,例えば,商品の欠陥が原因で人が怪我をしたり,死亡したり,他の財産が毀損したりした場合の損害については,不法行為の特別法とされている製造物責任法という法律で製造業者が責任を負うことになっています。
そのため,欠陥が原因で,消費者が怪我をして入院したような場合,消費者は小売店に対して契約責任を問うこともできるし,製造業者に不法行為責任を問うこともできるということになります。
この場合は,製造物責任法の要件を充たす限り,製造業者は直接契約をしていない消費者に責任を負うということはあります。
事業者には,大きく分けて,契約責任と不法行為責任の2種類の責任が生じうるということは理解しておくと良いでしょう。
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