英文契約書の相談・質問集223 代理店に売買契約の代理権を与えるべきですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「代理店に売買契約の代理権を与えるべきですか。」というものがあります。
ここでいう代理店契約というのは,Agency Agreementのことで,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)のことではありません。
両者の違いは,代理店契約(Agency Agreement)では,代理店は買主にならず,あくまで売主が直接顧客に商品を売りますが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,販売店が自ら買主となって在庫を持ち,これを顧客に転売するという点にあります。
両者の違いの詳細はこちらの記事でご覧下さい。
この代理店契約を締結する際,サプライヤーとしては,自社と顧客との間の商品の売買契約の締結件を代理店に与えるかという点が問題になります。
通常,売買契約締結の代理権がある代理店をエージェント(Agent)と呼びます。
反対に,代理権を持たず,サプライヤーに顧客を紹介するという営業行為だけをする代理店を,セールスレプレゼンタティブ(Sales Representative),略してセールスレップ/レップと呼ぶこともあります。
代理店に代理権を与えたほうが良いのか,与えないほうが良いのかは,一概にはいえず,サプライヤーの考え次第でしょう。
汎用品でたくさん売るようなものであれば,代理権を与えてしまったほうが販促上効果は高いでしょう。
逆に,取引金額が大きい機械やカスタム品などでは,サプライヤーがかけるコストの大きさや代金回収の問題などを考慮すると,サプライヤーが顧客を見定めて販売するというほうが安全でしょう。
ただ,代理店の立場からすると,せっかく広告宣伝費をかけて潜在顧客を獲得して,サプライヤーに紹介したのに,サプライヤーがどんどん注文を断るということでは,代理店は通常コミッションベースで利益を上げていますから,代理店の利益が立ちません。
そのため,代理店としては,受注を自社でコントロールできるように,可能なら代理権が欲しいということになるでしょう。
ただ,販売の代理権まで代理店が取得するとなると,それ相応の責任を負わされ,かなりの業務を任されてしまうということにも繋がります。
責任の大きさと利益の大きさはある程度比例する関係にありますから,多くの利益を得たいとなれば,その分責任も大きくなります。
そもそも代理店は販売店と比べて,自ら在庫を抱えず手数料で利益を上げていくというビジネスモデルで,法的責任が大きくない点にも利点があります。
にもかかわらず,あまり責任が大きくなるようであれば,代理店ビジネスを選択するメリットが薄れてしまうという側面もあります。
そのため,中間的な方法としては,サプライヤーが注文を拒絶できる場面を制限することが考えられます。
例えば,抽象的ではありますが,Supplier shall not unreasonably refuse an order from a customer introduced by Agent.(サプライヤーは不合理に代理店が照会した顧客からの注文を拒絶してはならない。)などと英文契約書に記載することがあります。
以上のように,代理店契約(Agency Agreement)を締結する際は,サプライヤーと代理店の利益を調整し,お互いがwin winになりやすいような権限を割り振っていくのが良いでしょう。
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