英文契約書の相談・質問集234 相手の契約違反で被った損害は全額請求できますよね。
海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手の契約違反で被った損害は全額請求できますよね。」というものがあります。
契約違反・債務不履行があった場合,契約違反で損害を被った当事者は,債務不履行をした当事者に対してその損害を賠償するように請求できるという救済措置(損害賠償請求/Damages)は,多くの国の法律で採用されています。
ただし,何を損害として認めるのか,賠償額をどう算定するのかという考え方については,各国でまちまちです。
例えば,日本の民法では,その債務不履行によって通常生ずべき損害(通常損害)が原則として賠償の対象となるとされています。
そして,例外的に,特別な事情によって生じた特別損害については,債務不履行をした当事者が,債務不履行当時に,その事情を予見すべきであったときは,賠償の対象になるとされています。
英国法でも,通常損害が原則として認められ,上記の特別損害については,契約締結当時に,債務不履行をした当事者がその損害の発生を予見できた場合に限り認められるとしています。
両者の考えは類似しているといえますが,予見可能かどうかの判断の時点が,日本では債務不履行時とされているのに対し,英米では契約締結時とされている点で異なっています。
また,英国法では,Mitigationという概念があり,債務不履行を受けて損害を被った当事者は,合理的な範囲で損害の拡大を防止しないと,賠償を受ける額を減額されるという制度があります。
このように,国の法律によって,どこまで損害賠償が認められるかの範囲や,その判断基準もまちまちです。
そのため,もし英文契約書に損害賠償の範囲や判断基準について書かれていないと,法律や判例によって想像しなければならないという不安定な状況になってしまいます。
相手の債務不履行によって自社が被った損害全額を常に請求できるというわけではないのです。
したがって,英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),修正をする際には,損害賠償の範囲,免責の範囲などをきちんと交渉して,明確に定めておく必要があります。
英文契約書では準拠法を定めるといっても,契約当事者双方が法律の内容を熟知しているとは限りませんので,可能な限り事前に合意して定めておくことが大切です。
そうしないと,いざ契約違反が起きた際に,準拠法を調査して損害賠償額を算定することになり,そうして算定された損害賠償額が想定と大きく異なっていれば,トラブルが大きくなってしまいます。
こうしたことを防ぐために,予め契約書において,損害賠償義務が発生する要件と,賠償される損害の範囲を定めておけば,上記のような不都合はある程度回避できるので,契約違反時のトラブルの拡大も防ぐことができます。
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