英文契約書の相談・質問集235 販売店契約と代理店契約はどちらがリスクが高いですか。

 

 海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約と代理店契約はどちらがリスクが高いですか。」というものがあります。

 

 日本企業が,海外のメーカーの商品を日本で販売展開したいと考えたとします。

 

 この場合の方法は,大きく分けて①販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)か,②代理店契約(Agency Agreement)という2つの方法があります。

 

 販売店契約のほうは,販売店(Distributor)となる日本企業が,海外メーカーから直接商品を購入して,在庫もって販売展開するという手法です。

 

 自社が買主になって在庫を抱えますので,売れなければ在庫の焦げ付きというリスクがあります。

 

 また,自らが商品を仕入れるという意味では買主ですが,購入した商品を日本の卸や小売に商品を売りますので,同時に売主でもあります。

 

 そのため,販売店は売主として契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)などの法的責任も負うことになります。

 

 さらに,販売店はメーカーから商品を輸入しているので,製造物責任法が定めている輸入者として製造物責任も負います。

 

 つまり,輸入した商品に欠陥があり,その欠陥が原因で人が怪我をしたり死亡したり,物が壊れたりした場合の損害を賠償する責任があるということです。

 

 このように,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)は,かなり責任が重く,リスクが高い契約形態だといえます。

 

 これに対して,代理店契約は,代理店(Agent)が自ら商品を仕入れることはなく,代理店は日本国内の顧客や潜在顧客に営業をかけるだけという販売手法です。

 

 そして,顧客や潜在顧客が海外メーカーの商品を購入したいということになれば,海外メーカーからその顧客に対し商品を売らせます。

 

 つまり,自らは商流に入ることなく,あくまで商品の売買はメーカーと顧客との間で直接行われ,完結します。

 

 要するに代理店契約は手数料ビジネスですので,初期投資が小さく,在庫リスクもありません。

 

 そして,代理店が紹介した顧客に対するメーカーの売上から,一部を手数料(コミッション)として,代理店は利益を受け取ります。

 

 このように,代理店契約(Agency Agreement)では,代理店は買主にも売主にもなりません。

 

 そのため,売主としての責任も負いませんし,輸入者にもなりませんので,輸入者としての製造物責任も負いません。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に比べて,代理店契約は,ビジネス上のリスクや法的責任の度合いが小さいといえます。

 

 もっとも,そのかわり,代理店は割と低率な手数料しか受け取ることはできず,利幅は販売店のほうが良いです。

 

 販売店は,自分で小売価格を設定して粗利を決められますが,代理店は自分で小売価格を決められ粗利を決定できるわけではなく,あくまでメーカーの手数料に縛られるからです。

 

 ビジネスは一般的にハイリスクであればハイリターンが期待でき,反対にローリスクであれば小さなリターンしか期待できないと言われますが,ここでもこの原則は当てはまります。

 

 どちらが良いかは商品の性質や,メーカーとの関係,手数料率,見込み利益などによって,ケースバイケースで決定されます。

 

 とはいえ,リスクを取って大きく稼ぎたいのであれば販売店ビジネスを目指すべきですし,リスクを抑えて手堅く稼ぎたいのであれば代理店ビジネスを選ぶべきということはいえるでしょう。

 

 いずれにせよ,どちらを選択するかで,ビジネスモデルそのものが大きく変わるので,十分に吟味してからスタートさせる必要があります。

 

 日本では,販売店と代理店を厳密に区別することなく考えられていることがあります。

 

 ただ,上述したとおり,両者は利益の上げ方についても法的な責任の大きさについても相当に異なる特徴を持っています。

 

 そのため,契約交渉の入り口の段階でどちらのビジネスにするのかをきちんと整理して交渉をするようにし,販売店なのか代理店なのかを明確にしないまま条件交渉をしないようにしましょう。

 

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