英文契約書の相談・質問集267 英文契約書で売上や利益の定義はどう定めれば良いですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で売上や利益の定義はどう定めれば良いですか。」というものがあります。

 

 一定の英文契約書で,売上や利益の何%が報酬として支払われるなどという内容が記載されていることがあります。

 

 レベニューシャアや,コミッション収入などがあるビジネスで多く定められている内容です。

 

 このような場合,売上や利益は,報酬計算の前提になりますので,非常に重要な概念です。

 

 税務上や会計上,売上・利益は様々な考え方があります。

 

 そのため,単に契約書に「売上の何%」または「利益の何%」と書いても,どのように計算されるものが売上になるのか,利益になるのかが契約書に書かれていないと,当事者間で認識に齟齬があるという事態になる可能性があります。

 

 とりわけ,商慣習が異なる海外企業との取引ではこの認識の齟齬が起こる可能性が高まります。

 

 そのため,単に売上・利益と書くのではなく,その計算方法もきちんと契約書に書いておくことが大切です。

 

 ここで,「売上や利益はどのように定義すればよいですか?」と質問を頂くことがあります。

 

 ただ,これは法律問題というわけではなく,上述したとおり,当事者がどのように考えているかが明確で,お互いに齟齬がないということが重要だという問題です。

 

 例えば,売上なのでこのように算出されなければならないとか,利益なのでこのような計算式で導かれなければならないとか法律で決まっているわけではありません。

 

 どのような定義や計算式であっても当事者同士が誤解なく納得して合意しているのであれば,それが適用されることになるのです。

 

 ビジネスの根幹に関わる問題ですので,話し合って,この定義や計算方法で双方間違いがないという内容を合意して,その内容を契約書に落とし込むことが重要です。

 

 法律の専門家であっても,当事者がその契約で売上や利益をどう認識しているのか,細部まで認識していない可能性がありますし,会計上や税務上の概念で勝手に定義してしまうと,相手方の認識がずれているということが起こりえます。

 

 そのため,売上や利益などビジネス上のマターは弁護士などの第三者に文案を作ってもらうのではなく,まずは,当事者間で細部まで話し合って,これで両者の認識内容は一致しているという内容まで詰めることをおすすめします。

 

 その際,やり取りはメールなどログが残るコミュニケーションツールを使って行うこともおすすめします。

 

 これにより,あとで売上や利益の内容で異なる主張を相手方がしてきたとしても,メールの内容から,合意内容を解釈することが可能になります。

 

 以上のように,たとえ契約書の問題だったとしても,法律家が文言を作るのではなく,当事者がまずは明確で認識に齟齬がない文言を合意するというプロセスが大事ということもありますので,ご注意下さい。

 

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