英文契約書の相談・質問集268 NDAを締結したら秘密情報を開示しないといけないのですか。
海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「NDAを締結したら秘密情報を開示しないといけないのですか。」というものがあります。
NDA=Non-Disclosure Agreement(秘密保持契約書)(Confidentiality Agreement: CAともいいます)を締結すると,通常,情報の受領当事者は,①厳格な管理義務,②契約目的外に秘密情報を使用してはならないという義務,③第三者に秘密情報を開示または漏洩してはならないという義務などを負います。
では,逆に,開示当事者は自社の秘密情報を受領当事者に対して開示する義務を負うのでしょうか。
一般的には,このような情報の開示義務はありません。
秘密保持契約書は,あくまで将来のビジネスを見込んで,必要な範囲内で情報を開示することがあるが,開示した情報は秘密として管理されなければならないという趣旨の契約で,主として受領当事者側に義務があるものです。
したがって,NDAを締結したからといって,受領当事者は,開示当事者に対して秘密情報の開示を請求できる=開示当事者に秘密情報の開示義務があるというわけではありません。
また,通常は,秘密情報が開示されるとしても,As is basis(現状有姿)で情報が提供され,情報の正確性や有用性については保証されません。
そのため,開示された情報に依拠して受領当事者が何らかの行為を行ったところ,その情報に不正確な部分があったため,受領当事者が損害を被ったということがあったとしても,通常はそのことについて開示当事者は責任を負いません。
受領当事者はこれらのことをよく理解しておく必要があります。
秘密情報は保有者である開示当事者の財産であって,それを開示するのはあくまで保有者に利益があるからであって,受領当事者の利益のためではないのです。
また,他方で,開示当事者になる企業の方で,たまにNDAを締結したら受領当事者が要求する情報を開示しなければならないと勘違いしている方もいらっしゃいます。
契約書の内容や,将来的に想定するビジネスの内容次第で一定程度の情報を開示する義務を負う場合は皆無ではないですが,一般的には秘密情報の開示をするかどうかは開示当事者の判断次第となり,義務ではありません。
NDAの記載内容を見ても,通常は「開示当事者が自社の秘密情報を開示することがある」という書き方がされていて「開示当事者が自社の秘密情報を開示する」という義務の表現にはなっていないと思います。
もし,The Disclosing Party shall disclose the Confidential Information to the Receiving Party...などと秘密情報の開示が義務であるという表現がされている場合は,開示当事者としては修正を要することが多いでしょう。
NDAを締結した際の義務や権利については,誤解のないように,契約書をきちんと確認し,内容を精査しておく必要があります。
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