英文契約書の相談・質問集269 契約書の「義務」と「責任」はどう違うのですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書の『義務』と『責任』はどう違うのですか。」というものがあります。
「義務」と「責任」は,普段あまり明確に区別して使用していないかもしれませんし,特に明確に区別して使わなくても大きな問題になることはないとは思います。
ただ,契約書で使用される「義務」と「責任」は一応違う意味で使われていますので,区別して理解しておくことをおすすめします。
義務の方は,Obligationなどと英語では呼びますが,これはご承知のように,「…しなければならない」という作為の義務や,「…してはならない」という不作為の義務(禁止)を表します。
なお,英文契約書において義務を表す表現は,日常用語でよく使うMustではなく,Shallになります。
作為義務(何かをしなければならないという義務)の場合はShall...という肯定文とし,不作為義務(何かをしてはならないという義務)の場合はShall not...という否定文とします。
他方,英文契約書で責任を表す表現は,LiabilityとかResponsibilityが使われます。
厳密に言えば,Liabilityは法的責任を表し,Responsibilityは道徳的な責任も含む表現として責任を表します。
The Seller is responsible for...(売主は…について責任がある)とか,...is the responsibility of the Seller(...は売主の責任である)などとして使われます。
そして,英文契約書における「責任」の意味は,「当事者が義務を履行しない場合に生じるもの」と理解しておけば良いかと思います。
前半で述べた義務が契約書に記載されていて,その義務を負った当事者が義務を履行しないときに生じるものが責任として書かれているのです。
英文契約書の内容は,ほとんどが権利・義務と義務に違反した場合の効果で構成されています。
上記のうちの「効果」の部分が責任であると考えておけば整理しやすいと思います。
義務を果たさなかったことによりどのような効果が生じるのかという部分が責任を意味することになるのです。
英文契約書では,当事者がどういう義務を負っていて,それに違反した場合,どういう責任がどの程度生じるかという責任の分配を詳細に定める傾向にあります。
当事者がどのような義務を負っているかだけではなく,それに違反した場合の責任も当然ながら重要な内容です。
したがって,自身の責任がどのように配分されているかは正確に理解し,必要に応じて修正をしなければなりません。
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