英文契約書の相談・質問集277 ベトナム企業と取引する際の準拠法と紛争解決はどうすべきですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ベトナム企業と取引する際の準拠法と紛争解決はどうすべきですか。」というものがあります。
一般的な理解では,日本企業としては,自社が所属する日本の法律に準拠するとしたほうが都合がよいことが多いでしょう。
日本の法律であれば調べればだいたいのことはわかりますし,日本の弁護士であれば自社に顧問弁護士がいるということも多いですし,いなくとも探せば割と容易に見つかるからです。
したがって,一般的に準拠法(Governing Law)は日本法としたいと考えると思います。
また,ベトナムでは,まだ司法制度が十分に信頼に足るレベルにないと一般的に言われています。
そのため,日本企業としては,ベトナムでの訴訟を選択し,ベトナムの裁判所において裁判をする旨の裁判管轄条項(Jurisdiction)を定めるということは避けたいと考えるでしょう。
そうなると,日本での裁判や仲裁が選択肢に上がります。
ただし,日本の裁判で出された判決については,ベトナムでは強制執行できないとされています。
そのため,紛争解決を日本の裁判所での訴訟手続とすることも避けたほうが良いということになるでしょう。
そうなると,日本での仲裁(Arbitration)手続きを選択するというのが有力な選択肢になります。
もっとも,ベトナム企業としては,相手国の仲裁となると公平性が損なわれるため,避けたいと考えることも多いでしょう。
こうしたことを考慮して,第三国であるシンガポールや香港での仲裁を選択する日本企業も増えています。
ベトナム,日本,シンガポール,香港はいずれも,ニューヨーク条約に加盟していますので,理論上は,いずれの国の仲裁判断(Arbitral Award)も所定の手続きを経ればベトナムで強制執行できます。
ただし,ベトナムでの強制執行はベトナムの裁判所がそう簡単には認めないとも言われていますので,この点は注意が必要です。
当然といえば当然ですが,仲裁地,裁判管轄や準拠法をどうするかという問題よりも,トラブルの解決を最終的に判決や仲裁判断に委ねざるを得ないような事態を招かないように予防線を張ることのほうがはるかに重要です。
このように紛争を事前に予防する法務のことを「予防法務」と呼んでいますが,紛争になってからの退所よりも事前の予防法務のほうが費用対効果が高いです。
そのため,契約交渉で準拠法や裁判管轄・仲裁条項にこだわって時間をかけるくらいなら,その他の内容を吟味して,なるべくトラブルが起こらないような内容にし,仮にトラブルが起きたとしても,契約書の内容に従えば争いなく話し合いにより解決できるように対策するほうがはるかに効果が高いでしょう。
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