英文契約書の相談・質問集284 基本売買契約と長期売買契約の違いは何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「基本売買契約と長期売買契約の違いは何ですか。」というものがあります。
長期売買契約はLong-Term Sales Contract,基本売買契約はBasic Sales Contractなどと英語では表現します。
特に呼び方によってこうなるという法律やルールがあるわけではないので,どの用語を使っても,実際の契約の中身によってその取引の性質が決まるのですが,上記の用語には一応の想定される形態のようなものがあります。
基本売買契約という呼び方をした場合は,その契約自体で売買をするわけではなく,基本売買契約に書いてある条件で,今後個別の取引を発注・受注するという内容の契約になります。
つまり,基本売買契約を締結した後に,個別売買契約が予定されていることになり,個別売買契約があってはじめて,売買に関する法律上の権利義務が生じるということになります。
これに対して,長期売買契約は,その契約自体ですでに売買の約束をしてしまう契約のこといいます。
長期売買契約の契約書に,何を何個いくらで売って,いつ引き渡すのか,売買代金はどのように支払われるのか,すべて結論を書き込んで,長期の売買を成立させてしまう契約ということになります。
そのため,あとで発注するとか受注するとかの行為は予定されていません。
もし,売主が長期売買契約書に書かれているとおりに商品や原材料という売買目的物の供給ができないとなれば,すでに約束した義務を履行できない=債務不履行ということになり,契約の解除や損害賠償請求などを受ける可能性があるということになります。
間違えることはないと思いますが,その契約自体ですでに長期計画で売買をすることを決めてしまうのか,基本事項を決めておいてその後に発注ベースで売買をするのかによって,契約内容がまったく異なりますので,注意して下さい。
特に,自社で英文契約書をドラフトするのではなく,相手方が契約書を出してくる場合には注意して下さい。
もし内容が長期売買契約になっていると,自社が売主なのであれば供給義務が直ちに生じることになりますし,買主なのであれば直ちに継続的に購入する義務が生じます。
契約書の名称で必ずそうなるということではないのですが,長期売買契約と基本売買契約では,上記のように根本的な違いがありますので,注意しましょう。
どちらが妥当かは,もちろん当事者がどのような取引を目指しているのかによりますが,法的に考えると,一般的には長期売買契約のほうがリスクが高いといえるでしょう。
将来の財務状況などが変化する可能性があるのに,ある時点で長期的に売買をすでに法的拘束力のある形で約束してしまうからです。
また,ビジネス的に見ても,将来の経済情勢や自社の財務状況が不透明である異常,長期売買契約のほうがリスクが高い契約であるといえるでしょう。
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