英文契約書の相談・質問集237 Forecastと定めれば法的拘束力はないですよね。
海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Forecastと定めれば法的拘束力はないですよね。」というものがあります。
英文で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を作成する際に,販売店(Distributor)が,年間や四半期ごとにどの程度商品を購入するのかという販売予測を定めることがあります。
この場合,あくまでForecast(予測)なので,通常は,法的拘束力はないものと考えられます。
つまり,販売店(Distributor)としては,予測値を実際の購入量が下回ったとしても,特にペナルティは受けないというのが一般的な考え方だと思います。
ただし,もし,メーカーが取り扱っている製品に比較的長期のリードタイムが設定されているような場合,メーカーは販売予測に従って,生産に入らなければならないとか,製品の仕入れを起こさなければならないなどという事情があります。
こうした事情の下,メーカーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で定められた予測にしたがって,製品を製造したり仕入れてしまってコストがかかっているという場合には,ケースによっては,そのコストを販売店(Distributor)に請求するということがありえます。
その際に,単にForecastとしか書かれていないと,販売店(Distributor)が責任を負うケースもありえます。
こうしたことを回避するためには,Forecastの性質をはっきりと英文契約書に明記しておくことが大切です。
具体的には,法的拘束力はなく(英語ではnon-bindingといいます),上記のようなケースででも,販売店(Distributor)がメーカーの負担したコストについて責任を負わないのであれば,そのことを具体的に明記することが考えられます。
または,もう少し一般化して,ForecastはNon-binding(法的拘束力がない)なただの参考値に過ぎないため,Forecastに実際の購入量が達しなくとも販売店(Distributor)は責任を負わないと記載することも考えられます。
このように,Forecastといってみても,場合によってはクレームが起こる可能性があるので,Forecastという用語を使用しているから安全だとは考えず,より具体的に危険を想定し,どういう意味で使用しているのかを明記する姿勢が大切です。
このことはForecastという用語にだけ当てはまることではなく,英文契約書全般に当てはまる内容です。
用語を使用する際,それがその準拠法の法律用語として広く共通に理解されているという場合以外は,きちんとその用語の意味を定義して使用したほうが無難です。
例えば,Targetというような用語も,単なる目標値で努力義務に過ぎないのか,法的拘束力のある義務としての最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)なのかは,明確にし,もし未達の場合にはどのようなペナルティがあるのかも具体的に書くべきということになります。
相手も自社と同じように理解しているだろうというのは単なる思い込みの可能性があり,危険です。必ず用語の具体的な意味を説明するようにしましょう。
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