英文契約書の相談・質問集245 書面通知は相手に届かないと効力がないですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「書面通知は相手に届かないと効力がないですか。」というものがあります。
結論からいうと,書面通知が相手に届いていなくても通知の効果が生じることはあります。
到達するまで効果が生じないという考えを日本では,「到達主義」といいます。
逆に未だ到達していなくても発送した時点で効力が生じることを,「発信主義」といいます。
この発信主義が適用される場合には,相手に届いていなくとも通知の効果が発信の時点で生じます。
ただ,国際取引・英文契約書では,準拠法がどこの国の法律なのか,また,意思表示の種類が何であるのかなどによって,発信主義なのか到達主義なのかが変化すると扱いにくいです。
そのため,Notices(通知)という一般条項/ボイラープレート条項があり,通常は,書面による通知について,どの種類の書面を送った場合,どの時点で相手に着いたとみなすなど,通知に関するルールを契約書で決めておくのが一般的です。
なお,このNotices(通知)条項で,各当事者がどこに書面通知をしてほしいか,書面を受け取る場所の住所を指定することもよくあります。
この通知場所の指定がある場合,いくつかその会社にはオフィスがあっても,指定された住所地に通知しないと通知の効果が得られないことになりますので,注意が必要です。
また,書面による通知のときに,電子メールを含めるかどうかも問題になります。
B2Bのビジネスではあまりないですが,郵送の書面通知の場合,自分に都合の悪い書面だとわかると,わざと書面を受け取らないという人がいます。
ただ,書面を受け取らなくても書面通知を完了させる方法はありますし,受領拒絶の場合は到達主義の下でも到達したものとして扱うとしている国もあると思います。
そのため受取拒否をしても法的に意味がない可能性がありますし,そもそも自社や自分に都合の悪い書面の受け取りを拒絶していても根本的な解決にはなりませんので,こうした行為はあまり褒められたものではありません。
とはいえ,こうした不当な行動を取る人もいるので,こうした場合に備えて,契約書で,書面通知には電子メールも含むとしておいて,電子メールで送信してしまうという方法を取ることもあります。
とりわけ国際取引では,郵送で書面を送るとなると,時間と費用と手間がかかりますので,最近では電子メールによる通知も有効とする契約書をよく見ます。
電子メールによる通知を通知として有効としても特段の不都合はないことのほうが多いでしょうから,このような取扱いをしておくのは合理的でしょう。
いくら通知の受領拒否の場合は法的に到達したものとして扱われるケースがあるといっても,相手が通知書の内容を読んでいないのですから,相手はこちらの主張を否定してくるでしょう。
そのため,そもそも到着していないとか読んでいないという相手方の主張を崩せるほうがより好ましいわけです。
いざトラブルになり,契約解除の通知をするなどという場面になると,通知による解除の効果がいつどのように生じるのかは重要な問題になります。
そのため,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に,通知の方法や,効果が生じる条件などを精査しておく必要があります。
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