Dispute(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Disputeがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「紛争」という意味で使用されます。
英文契約書で最も使用頻度が高い条項は,Dispute Resolution(紛争解決)条項です。
この条項は,紛争が生じた場合にどう解決するのかについて規定した条項です。
契約当事者間に紛争が生じてしまった場合,通常は,当事者間の話し合いでまず解決を試み,それでも解決しなければ,Arbitration(仲裁)やLitigation(訴訟)で解決すると規定します。
国際紛争では,訴訟よりも仲裁が使われる方が一般的です。理由は色々あるのですが,大きな理由の一つは,強制執行の行いやすさにあります。
訴訟において下される判決よりも,仲裁において下される仲裁判断のほうがニューヨーク条約加盟国においては強制執行がしやすいとされているのです。
和解が見込めず,判決や仲裁判断という終局的な判断至る可能性が高く,仮に相手方が敗訴しても任意に義務を履行することを期待できないようなケースでは,特に強制執行の便宜の重要性は高まります。
なお,特に中小企業の場合,安易に裁判や仲裁を紛争解決の手段に選択することは避けたほうが無難です。
費用と時間が膨大になるおそれがあり,多くのケースで費用倒れになってしまうからです。
そのため,まずは企業同士または弁護士間の交渉により和解で解決することを目指すべきでしょう。
ただ,ケースによってはやむを得ず強制執行も想定して訴訟や仲裁を選択せざるを得ない場合があります。
その場合,国際取引では,異なる国に属する企業間が紛争になるので,この強制執行を相手方の属する外国でしなければならないケースがあり,これを見越して仲裁を選択するということがよく行われているのです。
仲裁をするためには,当事者が紛争を仲裁で解決するという旨の「仲裁合意」が必要ですが,この「仲裁合意」は,通常,契約書にすでに記載しておきます。
それがArbitration(仲裁)条項で,この条項にもDisputeという用語がよく使われます。
こうした紛争解決条項ではDisputeという用語は頻出しますが,ほかにもDisputeが登場する場面はあります。
それは,請求書(Invoice)記載の金額に疑義がある場合は一定の方法で解決するというような規定を置く場合です。
例えば,If Purchase disputes an invoice issued by Supplier...(買主がサプライヤーの発行した請求書に疑義がある場合は…)などと,請求金額に誤りがあるのではないかとして金額を争うという場面を規定する際にもDisputeが使われます。
成果報酬や売上に比例して算出されるコミッションやロイヤリティについての請求では,このような請求金額に疑義がある場合にどのように解決するのかについて記載した条項が英文契約書に置かれることがあります。
請求金額は当然ですがビジネスの根幹に関わる問題ですので,請求額の計算根拠や疑義がある場合の処理について詳しく記載しておくことが大切です。