英文契約書の相談・質問集249 ファシリテーション・ペイメントとは何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ファシリテーション・ペイメントとは何ですか。」というものがあります。
ファシリテーション・ペイメントという用語は,多義的に使用されていますが,典型的なのは,商品を輸出しようとした際に現地の税関職員などが,通関手続きをスムーズに行うために求めてくる手数料のようなものを指します。
なんとなく,用語のイメージからか,手続きを迅速に進めるための少額の手数料ということで,払ったとしても大きな問題にならないのではないかと考えている人もいます。
しかしながら,基本的には贈賄の一種として違法としている法律が多いです。
したがって,ファシリテーション・ペイメントを求められても,応じてはいけないというのが大原則になります。
アメリカのForeign Corrupt Practices Act(FCPA)などは厳格な要件を定めたうえで,例外的に許される場合を規定していますが,基本的にはアメリカを含め多くの国でファシリテーション・ペイメントは禁止されています。
日本では贈賄を規制している不正競争防止法において,ファシリテーション・ペイメントは違法としています。
また,日本企業がイギリスに海外進出をしていると,進出形態によっては,イギリス現地の会社がファシリテーション・ペイメントを支払い,イギリスの賄賂防止法(Bribery Act 2010)(UKBA)違反した場合,日本企業もUKBA違反として罰金を課されることがあります。
余談ですが,UKBAでは公務員だけではなく私人に対する支払いも贈賄になる可能性があるので注意して下さい。
このように,ファシリテーション・ペイメントというニュアンスから単なる手数料のように考えて支払いをしてしまうと,あとで大きな問題になることがあります。
グローバルマーケットにおいて各国がフェアに競争をするという建前で,UKBAやFCPAが制定されており,これらの法律は「域外適用」といってイギリスやアメリカ以外の地域での違反についてもこれらの法律が適用されることがあります。
そのため,ファシリテーション・ペイメントを求められても応じることなく,直ちに本社や専門家に対応を相談するようにしましょう。
グローバルな経済競争が行われている昨今,自国の常識的な感覚で商売をしていると思わぬところで犯罪行為をしてしまい,身柄を拘束されるなどということも起こっていますので,十分注意して下さい。
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ギリス賄賂防止法(Bribery Act 2010)

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