英文契約書の相談・質問集250 相手が日本語がわかる場合でも英文の契約書にすべきですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手が日本語がわかる場合でも英文の契約書にすべきですか。」というものがあります。
取引先が海外の企業でも日本人が経営していたり,日本人の役員がいたりすると,契約は日本語でも大丈夫だという場合があります。
ただ,海外との取引で標準言語は英語ですし,外国の企業と契約するときは英文の契約書で締結することがほとんどですので,日本語で契約書を作るとあとで却ってよくないことが起こるのではないかと心配される方がいらっしゃいます。
結論からいうと,日本語で作成可能なのであれば日本語で作成し,準拠法を日本法として紛争解決も日本で行うとしておいたほうが基本的には有利だと思います。
もちろん,自社が売掛金請求や損害賠償請求などを訴訟にてする場合に,強制執行のことを考えれば最初から相手国の裁判所に管轄権を与えておいたほうがスムーズであるなどの考え方もありますが,ここでは契約書の言語の話に絞りたいと思います。
日本語を相手も理解できるのであれば,自社としても100%理解できる日本語で契約書を作成したほうが,誤解や見落としなどの危険が少なくなります。
また,英文で契約書を作成して,準拠法を日本法とし,紛争解決も日本国内で行うと書いていても,日本の裁判では,結局英文契約書を和訳して裁判所に提出しなければなりません。
日本の民事訴訟は日本語でのみ行うことができると決められているからです。
ただ,いったん英語で作成したものを和訳すると,意味合いが変わったり,日本語として訳出するのが困難だったりという不都合が出てきてしまいます。
そのため,最初から日本語で契約書を作成したほうが,翻訳の困難さを避けることができるので,メリットがあります。
日本語で作成した契約書だと,取引先に日本語ができる役員などがいなくなった後に契約書を理解できる人間がいなくなるという不都合を指摘する方もいらっしゃいます。
確かに,トラブルの交渉時などはそれがデメリットになることもあるかもしれませんが,その場合は,取引先が自社の責任で和文契約書を英語などに翻訳して対応することになるでしょう。
その場合に契約書の解釈論争などがあれば,基本的には日本語を母国語とする日本企業のほうが解釈論上の優位性を持つことができかもしれません。
以上から,相手の日本語の能力が低いのに,無理やり日本語で締結するような場合はあとで無効主張などされて問題になることがありえるでしょうが,相手も日本語が堪能なのであれば,日本語で契約したほうが良いでしょう。
国際取引=英語で契約しなければならないということではないので,誤解しないようにして下さい。
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