英文契約書の相談・質問集254 中国企業と取引するときに注意したほうが良い点はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「中国企業と取引するときに注意したほうが良い点はありますか。」というものがあります。
中国企業との取引において気をつけるべき点というのはたくさんあるのですが,ここでは重要な大きなポイントについていくつか解説します。
まず,サンプルやテスト機を送付したり,本格的に取引を開始したりする前に,必ずNon-Disclosure Agreement(NDA)=秘密保持契約書を締結しましょう。
もちろん一概にはいえませんし,あくまで私の経験の中にすぎませんが,中国企業は相対的に見て,模倣リスクや秘密情報の漏えいリスクが高いほうだといえるからです。
契約しても破る人は破るので,NDAを交わしたから安心というわけではありませんが,最低限NDAを締結することは必要です。
また,情報もすべて開示したり,必要以上に広く開示したりせず,必要最低限の情報のみ開示するようにしましょう。
コア部分をブラックボックス化できるならそのようにし,商品やサービスを開示してすぐに真似できるという状況は物理的に避けるとより良いでしょう。
そして,本格的に契約をする際には,当然ですが,取引に関する契約書を作成します。
通常の取引の契約書(売買契約(Sales Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement))であれば,中文である必要はありませんので,日本語か英語で作成するほうが良いでしょう。
ただ,中国企業は中文での契約を強く要求してくることも多いです。
このような場合の代案として,または,両者の対等性を重視するなら,どちらの国の母国語でもない英文契約書にするのが良いかと思います。
また,準拠法と紛争解決条項についても注意が必要です。
中国企業は準拠法を中国法にして,中国での裁判を求めてくることも多いです。
ただ,中国での訴訟はまだまだ問題があると一般に言われています。
そのため,せめて中国での仲裁にするか,できれば,準拠法を日本にし日本での仲裁にしたいところです。
両者が譲らないような場合は,妥協策として,第三国の香港やシンガポールの法律を準拠法とし,これらの地を紛争解決地,具体的には仲裁地に選ぶというのも有効です。
なお,中国と日本は裁判所の判決が相互に承認されていない状態と理解されているため,日本の裁判所が下した判決は中国では強制執行できないとされています。
そのため,中国企業との契約時に裁判管轄を日本とするという規定は,強制執行の観点からは実効性がない場合があるので,注意して下さい。
以上が,非常に簡単ではありますが,中国企業と取引する際に,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正するために特に重要になる点の解説です。
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