英文契約書の相談・質問集255 契約終了後も競合品取扱禁止と定めることはできますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約終了後も競合品取扱禁止と定めることはできますか。」というものがあります。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などでは,メーカーは販売店(Distributor)に自社製品に集中して販促活動をしてもらいたいため,他社の競合品を販売店(Distributor)が取り扱うことを禁止することがあります。
特に,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)では,メーカーが一定の地域内で別の販売店(Distributor)を指名することができなくなるため,他社の競合品を販売店(Distributor)が取り扱えないようにすることが大きな意味を持ちます。
メーカーとしては,販売店(Distributor)に一定地域の独占販売権を与えてあげているわけですから,その分自社製品の販売に100%の力を注いで欲しいと考えるわけです。
一概にそうなるとは言えないと思いますが,一般的には,競合品も売っているとなると売上が分散されてしまい,メーカーの利益を最大化できないと考えられるからです。
そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement),特に独占販売店契約には,競合品の取扱いを禁止する条項が入っていることが多いです。
上記のように,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)が続いているのであれば,メーカーとしては,販売店(Distributor)に競合品を扱わず自社製品のみを積極的に売って欲しいというのは理にかなうところがあるでしょう。
ただ,メーカーとしては,自社との取引が終了した瞬間から,販売店(Distributor)がこれまでメーカーのために開拓した販売チャネルをそのまま使って競合品を扱われると,新しい販売店(Distributor)がメーカーの商品を販売していく際の大きな障害になると考えることがあります。
そのため,メーカーは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了後も販売店(Distributor)が競合品を扱えないようにする規定を入れたいという事情があります。
これは可能なのでしょうか。この問題は,独占禁止法や競争法に違反しないかという問題です。
一般に,契約期間中の競合品の取扱禁止規定は,有効と解釈される傾向にありますが,契約終了後の禁止は無効とされる可能性が高まるので注意して下さい。
やはり,販売店(Distributor)との契約が終了しているにもかかわらず,競合品を扱えないとなると,販売店(Distributor)の事業が不当に圧迫される可能性がありますし,自由な市場競争が不当に害される可能性があるためです。
例えば,EUの競争法に関するガイドライン(Guidelines on Vertical Restraints, III Application of the Block Exemption Regulation, 5)においては,最長で1年間であれば認められる余地があるとして規制をかけています。
このように,契約終了後の競合品の取扱禁止規定は,契約期間中の場合よりも無効になりやすいということは理解しておく必要があります。
ただ,メーカーが契約終了後も自社製品の在庫販売を許して合理的期間内に限り競合品取扱を禁止するというような場合は,契約終了後の競合品の取扱禁止規定も有効となる余地がありますので,一切認められないというわけではありません。
在庫販売が可能である以上は,他社の競合品の取扱いを禁止しても一定の合理性が認められるということが理由の一つです。
以上のように,販売店契約などにおいて,契約終了後も競合品の取扱いを禁止すると法律に違反する可能性があるため,現地の法律も含め事前に調査の上で慎重に判断をする必要があります。
→next【英文契約書の相談・質問集256】販売店契約終了時に支払う補償金は少額でも良いですか。
英文契約書に関するサービス内容のお問合せ,見積依頼は下記からお気軽にどうぞ。
正式にご依頼頂くまで料金はかかりません。
原則として,当日,遅くとも1営業日以内(24時間以内)に折り返しご連絡させて頂いております。