英文契約書の相談・質問集256 販売店契約終了時に支払う補償金は少額でも良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約終了時に支払う補償金は少額でも良いですか。」というものがあります。
日本のメーカーが海外企業と販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結する場合,販売店(Distributor)を保護する法律である「販売店(代理店)保護法」が現地法にないかを確認しましょう。
この販売店(代理店)保護法は,強行法規/強行規定といって,当事者がその法律と異なる合意をしていたとしても,強制的に法律が適用される可能性が高いです。
そして,販売店(代理店)保護法では,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させた場合,メーカーが一定の補償金を販売店(Distributor)に支払わなければならないと決められていることがあります。
では,これに従って,日本のメーカーとしては,少額の補償金の支払いを契約書で約束しておけば安全に契約を終了させられるのでしょうか。
これは,現地の法律の内容によりますが,一般的には,あまりに少額な補償金だと,結局補償金の支払いをしたことにならないため,少額すぎる補償金条項は無効とされる可能性があります。
国によっては,補償金の金額の計算方法まで定めていることがあります。
このような場合は,少額の補償金支払い条項は無効となってしまう可能性が高く,意味がありません。
このように,いくらでも良いので補償金を支払えば済むという単純な話ではないのです。
そのため,海外進出するにあたっては,現地の販売店(代理店)保護法を調査し,補償金の支払いが強制的に定められている場合は,その算定方法や相場金額なども調べ,事業計画の中で補償金の支払いも見込んでおかなければなりません。
このような法律を知らずに海外展開し,販売店(Distributor)のパフォーマンスが悪いから契約を解除したところ,多額の補償金の支払いを請求されたのでは大変な事態になりかねません。
せっかく販売店(Distributor)を使用して現地で利益を上げていたのに,契約終了時の補償金支払いによりその利益のほとんどを吐き出してしまい,結果意味がなかったとか,損失を出して終えることになってしまったということがありうるのです。
契約書にいくら準拠法を日本法にすると書いて合意をしたとしても,現地の強行法規/強行規定と呼ばれる法律が適用されると,予定していた事業計画のとおりに終えることができなくなることがあります。
そのため,準拠法を合意したとしても,一定の範囲で現地の法律調査が必須になることがある点は注意が必要です。
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