英文契約書の相談・質問集305 相手に契約違反があったら即解除しなければいけませんか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手に契約違反があったら即解除しなければいけませんか。」というものがあります。
英文契約書には,通常,当事者に契約違反・債務不履行があった場合,相手方当事者は,契約を解除することができるという内容の解除条項(Termination Clause)が記載されています。
そのため,債務不履行をされた当事者は,その条項を根拠に契約を解除することができます。
ただ,債務不履行解除はあくまで権利であって,義務ではありません。
つまり,債務不履行された当事者は,契約を解除しても良いし,しなくても良いということになります。
現実に,一度債務不履行があっても,直ちに解除したいと考える場合ばかりではなく,少し様子をみて,契約違反がその一度きりであるならば,契約は続けようと考えることもよくあります。
こういう場合に,解除権の行使を留保するときには,注意すべき点があります。
それは,債務不履行した当事者が,解除権を行使されないということは,解除権は放棄したのだと考えるような事態を作ることを避けるということです。
債務不履行した当事者からすると,自分が契約違反をしたのに,しばらくしても解除の通知がなく,その後も取引を続けていれば,解除権は放棄され,解除はされないのだと考える可能性があります。
しかしながら,債務不履行された当事者は,様子を見ているだけで,後の状況によっては,前に生じた解除権を行使して,いつでも契約を終了させられる状況にあると理解していることがあります。
この場合,両者の思惑が一致していないので,あとで解除権を行使したときにトラブルになることがあります。
こうした事態を避けるためには,債務不履行を受けた当事者は,解除権をいったん留保するが放棄はしていないという旨の通知書を相手方に出しておくと良いでしょう。
また,英文契約書に,解除権が一定期間行使されなければ,解除権は消滅しもはや行使できないという条項を入れることもあります。
さらに,No Waiverというボイラープレート条項を入れ,一度発生した権利を行使していなくともそれをもって放棄したとはみなさないという条項を入れれることもあります。
ただ,No Waiver条項があったとしても,解除権を留保する際には,念のため相手方にその旨を通知しておくと,お互いの誤解を避けられるため,より安全性は高まるでしょう。
このように,解除権が発生しても,しばらく行使しないと相手方が解除はないと期待し,あとで問題になることがありますので,契約書や通知書を使ってトラブルを回避することが重要です。
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