英文契約書の相談・質問集258 遅延損害金条項は有効ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「遅延損害金条項は有効ですか。」というものがあります。
英文契約書に金銭の支払いについて記載することはよくあると思います。
その場合に,支払期限も記載すると思いますが,遅延損害金は,その支払期限までに金銭を支払わなかった場合に発生するペナルティとしての利息のことです。
「◯年◯月◯日までに代金の全額を支払わなかった場合,年利◯%の遅延損害金を支払う」などと記載される条項が遅延損害金条項です。
Late payment(支払遅延)を抑止し,もし支払遅延が起きたら,ペナルティの利息も得ることができるということで代金を受け取る側の当事者に有利な内容です。
ただ,遅延損害金を定める場合,準拠法によって制限があることが多いので注意が必要です。
各国の法律で遅延損害金の利率の上限が定められている可能性が高いです。
そのため,遅延損害金を高率で合意していても,準拠法が利率の上限を定めている場合はその法律が強制的に適用され,合意した利率での遅延損害金の請求ができなくなる可能性があります。
もっとも,遅延損害金条項を定める一番の目的は,金銭支払債務を負っている当事者がペナルティを嫌がって,きちんと約束の期日までに全額を支払うことになるという抑止効果を得る点にあり,遅延損害金で儲けたいという点にあるのではありません。
そのため,法律により上限が設定されていても,それに従うということで特に問題はないでしょう。
英文契約書では,法律の上限を超えた高率の遅延損害金を合意した場合に,遅延損害金を支払うという条項の内容すべてが無効にならないように,念のため「法律により上限がある場合は,そちらに従う」としたり,「約定遅延損害金率と法定利率の上限とを比べて低い方の率とする」としたりすることがあります。
このように,遅延損害金条項は,必ずしも当事者の思惑どおりにならないことがありますので,注意が必要です。
遅延損害金に限らず,何らかのペナルティを契約書で定める場合は,法律の適用によりそのとおりの効果を得られないということがよくあります。
そのため,常に法律を意識して,罰則などの条項を作っていく必要があると言えるでしょう。
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