英文契約書の相談・質問集259 準拠法と裁判管轄条項は徹底的に拘るべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「準拠法と裁判管轄条項は徹底的に拘るべきですか。」というものがあります。

 

 契約当事者間で紛争になった際にどこの国の法律が適用されるのか,どこの国の裁判所や仲裁機関で仲裁を行うのかは,契約当事者の重大な関心事です。

 

 そのため,お互い自国の法律を適用し,自国の地で裁判や仲裁をするように取り決めたいと考え,契約前の話し合いが平行線をたどるということがよくあります。

 

 こうした場合でも,やはり準拠法と裁判管轄や仲裁地に関する条項は重要なため,絶対に譲歩すべきではないのでしょうか。

 

 そうとも限りません。そもそも,自国の法律を準拠法とし,自国の裁判所で解決すると定めることがいつも自社にとって有利ということにはなりません。

 

 例えば,日本企業の自社がライセンサーとして何らかの技術について外国企業にライセンスを与える場合を考えてみましょう。

 

 この場合,日本企業の義務としてはライセンシーに対してライセンスを与え,技術を使用可能にしてあげることがメインですので,契約を交わした瞬間に通常義務を果たしたことになります。

 

 そして,海外企業はライセンスを受けた対価としてロイヤリティを将来にわたり継続的に払う義務を負います。

 

 このような場合,日本企業は義務を既に果たしているので,自社が債務不履行をする可能性は低いですが,継続的にロイヤリティを払い続けなければならない外国企業は将来債務不履行をする可能性があります。

 

 そうすると,自社が裁判や仲裁をする可能性が高く,相手からこれらを起こされる可能性は低いということになります。

 

 そして,ロイヤリティの支払いについて外国企業が債務不履行した場合,その支払いを求めて裁判や仲裁をして,最終的に強制執行で回収することを考えると,相手国の法律に従い相手国において裁判をするとしておいたほうが手続きが簡単です。

 

 日本の裁判所で裁判をして勝訴判決を得ても,それをそのままの形で外国企業が外国において有している財産に対し強制執行をすることができないので,結局日本の判決を外国で執行するのは時間と費用が膨大にかかるからです。

 

 つまり,上記のような契約パターンの場合は,相手国の法律を準拠法とし,相手国で裁判するとしておいたほうが日本企業に有利とも考えられるのです。

 

 また,裁判管轄を定めたとしても,実際に仲裁や裁判をするのはお互いにとってかなりハードルが高いです。

 

 そのため,通常はトラブルになった場合でも弁護士同士の交渉で解決することがほとんどです。

 

 準拠法が日本法であれば日本の弁護士に交渉を依頼できるので有利な面はありますが,外国法となっていても,その国の弁護士を見つけられれば交渉を委任できますから,そこまでハードルが上がるわけではありません。

 

 したがって,準拠法や裁判管轄に徹底的に拘る必要性は必ずしも高くないということになります。

 

 これらの条項にこだわって,譲らずにいて取引がなくなってしまうくらいであれば,何とか譲歩できないかを具体的に考えることも大切です。

 

 あくまでビジネスのための契約であって,契約書ありきの発想にならないことが重要です。

 

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