Probation period(英文契約書用語の弁護士による解説)
海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Probation periodがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「試用期間」という意味で使用されます。
このProbation periodという用語がよく使用される契約書は,Employment Agreement(雇用契約書)です。
雇用契約をする際には,通常,正式に入社してもらう前に試用期間を設けます。
この試用期間という概念は,語感からすると,正式入社の前の「お試し期間」のようなイメージを持つかもしれません。
ただ,日本の法律では,一般に「解約権留保付労働契約」が成立している期間と考えられているため,試用期間後に本採用しないのは,実質解雇にあたると考えられています。
したがって,気に入らなければ試用期間後に入社を簡単に断れると考えている経営者の方がいらっしゃいますが,そう簡単なものではないので注意して下さい。
当然外国法の下で雇用する場合は,Probation periodというものがあるのか,あるとして法的性質はどのようなものなのかについて,事前に調査しなければなりません。
海外の現地法人で採用するとなると,(例えその労働者との間で準拠法を日本法とすると合意していても)日本法ではなく現地法が適用されることがありえますので,注意が必要です。
したがって,Probation periodという英文契約書用語が使用されることの多いEmployment Agreement(雇用契約書)には,現地の法律が強制的に適用されることが多いです。
日本でもそのようになっていて,日本企業には日本の労働法が強制適用されることがあります(法の適用に関する通則法第12条参照)。
外資(例:アメリカ)系の日本企業が日本人と契約するときに,英文契約書で,アメリカ法のある州法を準拠法にして労働者を自由に解雇できるなどと定めても,労働者が日本法を適用する意思を表示した場合,日本の労働法が適用されて(法の適用に関する通則法第12条)そのような規定は無効になってしまうことがあります。
このことは,海外の法人が雇用契約書を用いて現地で雇用をする場合も基本的に当てはまると考えてよいです。
このように現地法が強制適用される分野では,適用される法律の内容が大切になります。
そのため,Probation period(試用期間)の性格についても,外国での雇用の場合は日本法での概念のまま理解していると思わぬ落とし穴がある可能性があるので,海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には注意が必要です。