英文契約書の相談・質問集266 英文契約書でmustやcanは使いますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書でmustやcanは使いますか。」というものがあります。
Mustは日常用語としておなじみなので「…しなければならない」という義務を表すと理解されていると思います。
そのため,英文契約書で,mustを使用した場合も,その契約書をドラフトした当事者は,おそらく「義務」として,「…しなければならない」という意味で使ったのだと思います。
ただ,英文契約書で義務を表す用語は,通常,shallで統一されています。
Mustは多義的で,「…に違いない」などの意味もありますので,英文契約書で義務を表す表現として使用するのは避けたほうが良いでしょう。
義務を表したいのであれば,常にshallを使って問題ないと思います。
なお,論者によっては,shallは人以外のモノ・有体物を主語にできないので,モノが主語になるのであれば,mustを使うべきという人もいますが,人以外が主語になる場合も含めて実務的にはshallが好んで統一使用されていますので,個人的にはshallを使用して問題ないと思っています。
文法的な正確性ももちろん重要なのですが,英文契約書で何よりも大切なのは,当事者が意図している内容が正確に一義的に伝わることです。
そのため,文法の細部に拘るよりも実務的に誤解がない表現を使用するという方が実効性が高いと私は考えています。
また,canは「…することができる」という意味で日常用語としてよく使用されています。
そのため,canが英文契約書で使用された場合,「…することができる」=「権利」を表すものとして使われているのだと思います。
ただ,canは,「物理的に…することができる」,「可能である」という意味を持つので,「(権利として)…できる」という内容には使いません。
「(権利として)…できる」という意味を表したい場合は,mayやis entitled to...,have the right to...という用語を使うのが通常です。
以上のように,英文契約書では,mustやcanを義務や権利を表す用語として使用することはほとんどありませんので,自分で契約書を作るときには使用しないということで問題ないかと思います。
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