英文契約書の相談・質問集283 取引開始前に最も重要なことは何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「取引開始前に最も重要なことは何ですか。」というものがあります。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などを締結して継続的な取引関係に入る前にやっておくべき重要なことがあります。
それは,取引先の調査です。これは,単に取引先の財務状態などの信用面の調査だけではなく,およそ取引先は信用できるかという広い面での調査を意味します。
調査方法としては,①経営者に面会する,②相手の事務所や工場などを見学する,③従業員の働いている様子を見たり,インタビューしたりする,④会社の登記簿謄本,過去の決算資料や帝国データバンクなどからの情報を取り寄せる,⑤試験的に小ロットの取引をしてみる,⑥業界内での評判を聴取するなどが考えられます。
もちろん契約書の締結,契約書の内容も重要なのですが,契約書の交渉以前に勝負は始まっています。
契約書を交わす前に,どれだけ時間をかけられたかによってビジネスの成否が大きく左右されると言っても過言ではありません。
実際に,私の経験でも,取引先の事務所や工場も見学することなく発注をして大きな失敗をした日本企業も見ています。
そのため,取引開始前にきちんと相手の情報を入手し,できる限りの調査をして信頼できる相手かどうかをチェックすることは非常に重要です。
契約書によって相手を法的に縛ることは可能ではありますが,結局約束は破る人は破ります。
また,そもそも信用することができない相手と継続的な取引をすると,細々とした問題も含めて対応に追われ,非常にストレスフルな状況に陥ることが多いです。
したがって,契約書で縛れば良いという考えだけに頼ることなく,相手が信用に足るものであるかどうかをきちんと事前に見極めることも非常に大切です。
契約書は守ってほしいことを相手にわからせて,もし違反があれば法的に対応できるようにするという意味で非常に大切なものですが,現実的にはそれだけで安全ということはできません。
やはり,そもそも約束はきちんと履行をする,契約を破ったりしないという信頼に値する企業や経営者を見極めることが出発点として重要です。
このあたりをおろそかにして取引開始を急ぐと,後で大きな痛手を被ることがありますので,十分注意しましょう。
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