英文契約書の相談・質問集286 契約書は正直どう役に立つのですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書は正直どう役に立つのですか。」というものがあります。
英文契約書に限らず,和文契約書でも契約書全般は,実際どのように役に立つのかという根本的な話をしてみたいと思います。
契約書には,通常,当事者の権利と義務,義務に違反した場合に生じる効果や責任などが記載されます。
当然ですが,契約書に書かれた権利義務を実現できるように当事者が期待して契約書を作成するわけです。
ただ,残念ながら契約書といってもそれ自体はただの紙切れやデータにすぎませんので,当然契約書の約束を破る人や企業も現実にはいるわけです。
その場合,どうなるのかというと,契約書には国家=司法権の後ろ盾があるので,強制力があります。
多くの国で,契約書に書いてある権利を実現すべく,契約書を重要な証拠として,裁判所に訴えれば勝訴判決をもらえてその権利を強制的に実現するということができるようになっています。
例えば,売買代金1,000万円を買主が約束どおり支払ってくれないのであれば,売主は買主を訴えて,勝訴判決を得れば,強制執行により買主の財産を無理やり差し押さえて競売にかけるなどして売却し,代金を回収することができるわけです。
この司法権の裏付けがあるからこそ,契約書を守ろうという動機が当事者に生まれるわけです。
裏を返せば,この司法権の裏付けがなかったり,弱かったりすると,契約書の内容を守ろうという動機も小さくなってしまうということでもあります。
実際,新興国や発展途上国の一部の国では,司法権の後ろ盾が弱いため,当事者のコンプライアンス意識が低く,契約書の内容を尊重しないという傾向も見られます。
そのため,国際取引においては,相手国の司法制度の成熟度や実効性も考慮に入れて,相手のコンプライアンス意識を推し量るということも必要になってきます。
では,司法権が弱いということは,契約書を守らずとも「痛くない」ということになるのでしょうか。
そうともいい切れないでしょう。そのような企業はいずれ信用を失い,大きな取引はできなくなったり,国際社会での信用を得られないためにグローバルな成長は見込めなかったり,資本提携などのアライアンスが組めなかったり,消費者に見放されたりする可能性が高まるからです。
現代では,高度に情報化社会が進んでいるので,企業の不正などもガラス張りになりつつあります。
また,情報はインターネットを通して国の垣根を越えてすぐに世界中に拡散されるため,悪評はあっという間に世界中に広がります。
そのため,契約書を遵守しないなどの態度は明るみに出やすいですし,そのような企業が信用を落とすことは想像に難しくありません。
こうした観点からも今後は契約書や法律の内容を守るという前提が国際的に浸透していくものと思われます。
このような背景があれば,ますます契約書の機能は実効性を持つことになり,契約書に書かれた内容は現実に実現されるものという前提が浸透していくことになるでしょう。
これが契約書の機能だということができると思います。
まとめると,契約書は,当事者の権利義務を記載することなどを通じて,当事者が考えているビジネスの内容を描き出し,それを国家権力の強制力を背景に守らせることを目指す書面であり,かつ,もし守られなければ国家権力をもって権利を実現するための証拠であるということができると思います。
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